今日のことば

原文】
性は諸を天に稟(う)け、軀殻は諸を地に受く。天は純粋にして形無し。形無ければ則ち通ず。乃(すなわ)ち善に一になるのみ。地は駁雑(ばくざつ)にして形有り。形有れば則ち滞る。故に善悪を兼ぬ。地は本(も)と能く天に承けて以て功を成す者、風雨を起して以て万物を生ずるが如き是れなり。又時有りてか、風雨も物を壊(やぶ)れば、則ち善悪を兼ぬ。其の謂わゆる悪なる者、亦真に悪有るに非ず。過不及有るに由りて然り。性の善と軀殻の善悪を兼ぬるとは亦此の如し。〔『言志録』第108条〕

【意訳】
人の心は天から受け、身体は地から受けたものである。天は無形であるからすべてに通ずる。すなわち善と一体化している。地は不純物も混じった形有るものであるから滞る。それゆえに善悪双方を有している。とはいえ地は本来は天から受けて功を成すものであるから、風雨を起して万物に命を与える。しかし、時には風雨が物を破壊することがあり、こうなると善悪を兼ねていることになる。その悪も、真の悪ではなく、過ぎたり足りなかったりで適度なところを保てないために生じるのだ。心が善で、身体は善悪を兼ねるというのも、またそれと同じであろう。

【一日一斎物語的解釈】
人の心は本来形がなく善に通じている。身体は形が有るために時に滞り善悪をなす。身体も本来は心に通じて善をなすものであるが、時には悪に振れることがある。しかしその悪というものも、過不足が生じて中庸を失っているだけに過ぎない。人間の心と身体の善悪とはそういうものである


今日のストーリー

営業2課の梅田君が警察に違反切符を切られたようです。

「梅田、何をしでかしたんだよ?」

「一方通行を逆走してしまいました!」

「知らずに突っ込んだのか?」

「いや、正直に言いますと、分かっていて突っ込みました」

「アホか!」

「今朝から腹の調子が悪くて、途中で何度も車を停めてコンビニで用を足したりしていました。おまけに事故があって渋滞していたものですから、アポイントに間に合わないかも知れないと焦ってしまって・・・」

「気の毒な気もするけど、やはり一通逆走はマズいだろう」

「はい。時間帯で一方通行になる道だったので、まぁバレないかなと思いまして・・・」

「そうしたら、バレたのか?」

「警察が張っていました」

「ツキのない奴だな。しかし、ツキの問題にしてはいけないな」

「すみません」

「点数は大丈夫だよな?」

「今のところ無傷です。でも、これで念願のゴールド免許もお預けになりました」

「知るか!」

「すみません!」

「まぁ人間というのは心は善でも、時に体が心に逆らうことがあるらしいからな。俺もそのパターンでスピード違反で捕まったことがあるよ」

「腹の具合さえ悪くならなければ・・・」

「身体は自分の思うようにはならないからな。ところで梅田、前日に何を食ったんだよ?」

「課長に誘われて激辛つけ麺のお店に行ったじゃないですか!」

「あ、そうだったな」

「私は辛いのが苦手だと言ったのに、ほぼ強制的に連れて行かれたんです」

「あれ? じゃあ、俺が悪いってこと?」

営業2課のメンバーが神坂課長を見つめています。

「いやいや、それは酷いよ、こじつけだよ! 悪いのは一通を逆走した梅田だろう。俺がつけ麺屋に連れて行ったのとは因果関係が証明できませんな!」

「梅ちゃん、罰金はいくら?」

石崎君が聞いたようです。

「7,000円でした」

石崎君が神坂課長を見つめています。

「嘘でしょう。俺が払うの?」

一同の目が神坂課長に注がれています。

「わかったよ。あー、高いつけ麺代になったなぁ!!」


ひとりごと

心は善でも、手足は時に中庸の度を越すことがある。

以前にもあったように、一斎先生は心と身体の諸器官を別物と捉えています。

いずれにしても、人は時に、いけないと分かっていてもついやってしまうということがあります。

あくまでも過不足の問題であって、基本は心も諸器官も善であるとするのが、一斎先生の主張のようです。


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