今日のことば

原文】
人身の生気は、乃ち地気の精なり。故に生物必ず欲有り。地、善悪を兼ぬ。故に欲も亦善悪有り。〔『言志録』第111条〕

【意訳】
人間の肉体の生きる気力は、地から得た精気である。それ故、地には欲があるように、生物にも欲があるのだ。地は善と悪とを兼ねているから、欲にも善い欲と悪い欲があるのだ。

【一日一斎物語的解釈】
人間である以上、必ず欲を生じるものである。ただし、欲にも善い欲と悪い欲があるので、善い欲を発揮すべきである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の梅田君と同行しているようです。

「課長、欲を出すことって悪いことなのでしょうか?」

「ははは、どうしたいきなり?」

「私はこの会社でトップセールスになりたいし、出世もしたいんです。でもそれを親に話すといつも欲を出すなって叱られるんです」

「親から見ると、どれだけ大きくなろうと、どれだけ歳をとろうと、子供は子供だからな。心配なんだよ」

「でも、親だって息子が出世したら嬉しいはずじゃないんですか?」

「もちろん嬉しいよ。でもな、そのために無理をして体を壊したり、眠いまま運転をして事故を起こしたりするんじゃないかって考えるんだよ」

「じゃあ、欲を持つことは悪いことではないんですね?」

「基本的にはな。ただし、欲にも良い欲と悪い欲がある。悪い欲を持つのは駄目だろうな」

「良い欲と悪い欲ですか?」

「簡単に言うと利己的な欲は悪い欲、利他的な欲が良い欲ということになるだろうな」

「難しいなぁ」

「たとえば、自分だけ儲けたいとか、自分だけを評価して欲しいというような考えは利己的だから、そういうのを悪い欲というんだよ」

「みんなで儲けたいとかみんなで褒められたというのなら、良い欲になるんですか?」

「そうだな。そしてできるなら、自分が目立つのではなく、周囲の人を目出させてやる。そんな覚悟ができたら素晴らしいだろうな」

「うわぁ、それはキツイな。私は自分が目立たないと満足しない性格なんですよね」

「知ってる。(笑)」

「あ、バレてました?」

「まぁ、まだ若いうちはそれでもいいと思うよ。ただ、後輩が増えてきたり、自分が上司という立場になったときは、後輩や部下を立てることを意識すべきだな」

「その方が出世の近道になるのでしょうか?」

「うーん、それを期待して、後輩を立てるというのも利己的な感じがするよな。期待はしてもいいけど、必ずそうなるとは思わない方がいいだろう」

「出世って難しいんですね。トップセールスになれば自然と出世できると思っていました」

「物を売る能力と人を育てる能力はまったく別物だからな」

「わかりました。私も悪い欲を持たない様に、今のうちから周りの人を立てることを意識します!」

「それなら時々、俺のことも良く言ってくれよな。俺は褒められると頑張るタイプなんだよ」

「・・・」


ひとりごと

一斎先生は、欲には良い欲と悪い欲があると言います。

小生はそれを自分なりに咀嚼して、利己的な欲と利他的な欲がそれに当たると考えました。

言葉を変えれば、利己的な欲は私欲、利他的な欲は公欲と呼ぶことができます。

若い社員さんには、組織の中で明確な役割を与え、それによって組織に貢献する喜びを体験させると良いでしょう。

そうすれば、次第に公欲を充たすことに力を注げる人へと成長するはずです。


sotomawari_man