今日のことば

原文】
鍋内(かない)の湯、蒸して烟気(えんき)を成す。気、外に漏るれば則ち湯減ず。蓋を以て之を塞げば、則ち気漏るること欲わず。露に化して滴下し、湯乃ち減ぜず。人能く欲を窒げば、則ち心身並に其の養を得るも亦此の如し。〔『言志録』第113条〕

【意訳】
鍋の中にある湯が蒸発すれば水蒸気となって外に出て行く。こうなると鍋の湯量は減る。蓋をすることで蒸気を再び露として鍋に戻すことができ、湯量は減ることがない。人間の欲望もこれと同じである。無暗に欲望を撒き散らすことなく、抑制することで自身のエネルギーを失うことなく健全な日々を過すことができる。

【一日一斎物語的解釈】
私欲や我欲に蓋をすれば、心身共に健全に暮らすことができる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋に居るようです。

「一斎先生もたとえ話の名人ですね。自分の欲を抑えることを湯に譬えて、沸騰して湯気となるとお湯の量は減ってしまうが、蓋をすればまた露となって滴下するのでお湯の量は減らない、という言葉を知りました」

「あー、その話か。お湯と同じで、人間も無暗に欲をまき散らすとエネルギーを失ってしまう、という話だったね」

「はい、それです」

「もうひとつ付け加えるとするなら、お風呂のお湯は下の栓が抜けていたら量が減っていくよね。それと同じで、人間は反省を怠るとエネルギーを失ってしまうのかもね」

「なるほど。欲をまき散らすのも、反省を忘れるのも、すべては自分のエネルギーの減損になるわけですね」

「そう考えたら怖いことだね」

「私欲もそうですが、怒りなんかも同じかも知れませんね?」

「たしかに。無暗に怒りを表に出すと、エネルギーを失うだけでなく、人の信頼も失いかねないね」

「とはいえ、私のような凡人が欲や怒りをすべて抑え込むというのは、相当の一大事ですからねぇ・・・」

「それは私も同じだよ。だからこそ、思わず欲や怒りを洩らしてしまったときには、エネルギーの補充をすればいいんじゃないかな」

「どうやってですか?」

「読書などのインプットをしつつ、反省するということもエネルギーの補充になるだろう。でも、そういう時こそ、敬意と感謝だろうな」

「敬意と感謝か」

「すぐに欲や怒りを洩らすダメな自分に、部下の皆さんはついてきてくれる。こんなに貴くて有難いことはない!ってね」

「あー、そう思うと、自分の中に『次は俺がお返しをするぞ!というパワーが漲ってきますね」

「だよね!」

「瞬間湯沸し器みたいな私に、仕事とはいえついてきてくれるメンバーには感謝しかないです!」

「うん、私もいつもそう思っているよ」

「そして、もう一人感謝と敬意を伝えたい人がいますね!」

「ほぉ、それは誰かな?」

「私の目の前にいる貴いお方です。(笑)」


ひとりごと

質量不変の法則は、人間のエネルギーにも適応できるようです。

怒りや悲しみや欲望をストレートに表わせば、その分生きるエネルギーを外に放出しているのかも知れません。

それを堪えて溜め込むことで人として磨かれ、内にエネルギーを蓄えることができるのでしょう。

それでも凡人は、時にそうした穢れた想いを外に出してしまいます。

そのときはしっかり反省し、敬意と感謝をもって、もう一度やり直しましょう!!


ofuro_goemon