今日のことば

【原文】
世間第一等の人物と為らんと欲するは、其の志小ならず。余は則ち以て猶お小なりと為す。世間に生民衆しと雖も、而も数に限り有り。玆(こ)の事恐らくは済(な)し難きに非ざらん。前古已に死せし人の如きは、則ち今に幾万倍せり。其の中聖人・賢人・英傑・豪傑、数うるに勝(た)う可からず。我れ今日未だ死せざれば、則ち稍出頭の人に似たれども、而も明日即(も)し死せば、輒ち忽ち古人の籙(ろく)中に入る。是に於いて我が為したる所を以て、諸を古人に校(くら)ぶれば、比数するに足る者無し。是れ則ち愧ず可し。故に志有る者は、要は当に古今第一等の人物を以て自ら期すべし。〔『言志録』第118条〕

【意訳】
世間でも評判となるような人物になろうとする志は小さなものではないかもしれないが、私はまだ小さいと見ている。今現在この世にいる人間は多数いるが、それでも限りある人数である。よって世間で評判となる人物になることは出来ないことではない。既にこの世に居ない人間も含めると、その数は膨大である。その中には、聖人・賢人・英傑・豪傑とされる人が多数ある。私は今生きている人たちの間ではやや優れているとも言えそうだが、明日死んでしまえば古人の名簿に入れられてしまう。そこで私がしてきたことを古人と比較すれば、とても比べものにならない。これは恥じ入るべきことである。だからこそ、志ある人は、世間ではなく古今第一等の人物を目指すべきであろう。

【一日一斎物語的解釈】
自分の志を低く置いてはいけない。少し努力すれば手の届くような志をおいて、それを達成するのでは器の小さい人間だと言わざるを得ない。視野を広げ、自分の目指す分野において歴史上大きな成果を上げている人物と比較して、それに負けない人物、つまり古今を通してのナンバー1を目指すべきである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、昨日に続き読売ジャイアンツのことを話題にしているようです。

「昨日の中田の打席での立ち姿を見た時に、雰囲気があるなぁと思ったよ。彼はまだまだ過去の人ではないな」

「DeNAの砂田投手は、蛇に睨まれた蛙のようになってましたね」

昨日同様、話し相手は新美課長のようです。

「ストライクをひとつも取れなかったからな」

「打ちそうな雰囲気はありましたよね」

「ぜひ今日からはスタメンで使って欲しいな。ナカジも好調だけど、中田の打席での威圧感は流石だよ」

「これで中田選手を再生したら、いよいよ原監督は巨人軍史上最高の監督と呼ばれる日も遠くないですね」

「それはどうかなぁ? V9を達成した川上哲治という巨匠がいるからな」

「でも、あの頃はドラフトもなかったわけで、能力のある選手はこぞって巨人に入った時代ですからね」

「それはそうだけどね。たしかに、現在の12球団の監督の中では一枚も二枚も上の力量を持っているからな。現役の中で一番の監督だと言われても喜ばないかもな」

「古今東西で随一の名将というくらいのレベルを目指していそうな気がします」

「そういえば、一斎先生が同じようなことを書いているな。『自分は現役の学者の中では優れた位置にいるという自負はある。しかし、死んでしまえば古今東西の学者と比較される。そうなっても恥じないような学者となるべく励みたい』ってな」

「上には上があるんですね。私なんか、佐藤部長や神坂さんより上に行くことすら想像できないですよ」

「小さい野郎だな。俺なんか秒で抜き去らなきゃダメだぜ」

「たしかに比較対照を身近なところに置きすぎると、小さくまとまりそうですね。会社という枠を飛び越し、同業あるいは医療業界という枠をも超越して古今東西の素晴らしいリーダーと自分を比べて精進しなければいけないですね」

「かつての俺は、社内のトップセールスの地位を得ることを最大の目標にしていた。今思うと小さい目標だよな」

「でも、最初に乗り越える壁ではありますからね。ひとつずつ壁を越えていかなければ、目指すべき地位にもたどり着けませんよ」

「そうだな。実は今からクレーム処理に行くんだよ。面倒だから、お前に代わりに行ってもらおうかと思っていたんだけど・・・」

「そんなことでは、伝説の男にはなれませんよ!!」

「おっしゃるとおりです。気を引き締めて行って参ります!!」


ひとりごと

身近な目標を置くことは悪いことではありません。

しかし、ともすると、小さくまとまってしまうことが危惧されます。

目指すべき目標を置くなら、極力大きな目標を置いて、日々精進を重ねるべきでしょう。


matsushita konosuke
















和歌山県ホームページ、「わかやまの偉人たち」より