今日のことば

原文】
己を喪えば、斯に人を喪う。人を喪えば、斯に物を喪う。〔『言志録』第120条〕

【意訳】
自分自身を取り失えば、人が離れてしまう。人が離れると、すべてを失うことになる。

【一日一斎物語的解釈】
見境をなくして自分の私欲だけを求めると、周囲から人が離れていく。人が離れてしまえば、結局はすべてを失うことになる。
今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋で雑談中のようです。

「やはりS医療器から大量の離職者が出たようですね。噂ですと、営業部員はすべて退職届を提出したそうです」

「そうらしいね。こうなると単独での再生は不可能だろうな」

「どうもY社が吸収するのではないか、という噂が出ていますね」

「どこかがフォローしないとお客様に多大な迷惑がかかる。そうなれば、その施設の患者さんにも影響が及んでしまう。それが心配だよね」

「はい。ウチもS医療器の顧客だった数施設から、S医療器が納めていた消耗品の発注を回してもらっています」

「それは素晴らしい。地域のディーラー全体でフォローするしかないからね」

「正直に言って、売上規模からいくと、配達回数によっては赤字になるような施設もあるんです。でも、今はそんなことは言っていられませんからね」

「うん、そのとおりだよ、神坂君」

「それにしても、天国の先代は泣いているでしょうね」

「現社長は、自分の我欲に溺れて我を見失った。その結果、大切な社員さんを失うことになった。そして、結局は先代が築き上げた会社までも失うことになってしまったんだね」

「私も先代にはお世話になったので、なんだか他人事ではないんですよね」

「うん、それは私も同じだよ。かつては良きライバルでもあり、また時にはお互いに手を取り合ったこともある会社だからね」

「あの馬鹿息子が!」

「しかし、我々はS医療器の事例からも学びを得るべきだろうね」

「はい。人の上に立つ人間は、自分のことを後回しにして、まずはメンバーを立てることを最優先に考えるべきだということを、あらためて学んだ気がします」

「『仁者は、己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達すだね」

「『論語』ですか?」

「そう。孔子の言葉でね。『仁者と呼ばれる人は、自分が立とうと思えば先に人を立て、自分が伸びようと思えば先に人を伸ばす』という意味だよ」

「あー、まさにそれです。遠山社長は、自分の欲を優先し、自分が先に立つことばかり考えていたんでしょうね」

「うん」

「その『論語』の言葉と一緒に、今回のS医療器の事例を心に深く刻みます!」


ひとりごと

欲に溺れて自分を見失うことの代償は、とてつもなく大きなものになり得るということを、この章句は教えてくれます。

小生がここで重要だと感じるのは、リーダーになる前に、しっかりとこうした学びによって、我が身を修めておく必要があるのだ、ということです。

権力を握ってから学ぶのでは遅いのです。

勘違いをしないためにも、少にして学ぶことが重要だと考えます。


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