今日のことば

原文】
周官に食医有りて飲食を掌(つかさど)る。飲食は須らく視て常用の薬餌(やくじ)と為すべきのみ。「食(し)は精なるを厭わず。膾(かい)は細なるを厭わず」とは、則ち是れ製法謹厳の意思なり。「食の饐(い)して餲(あい)し、魚の餒(だい)して肉の敗るるは食わず、色の悪しきは食わず、臭の悪しきは食わず」とは、則ち是れ薬品精良の意思なり。「肉多しと雖も、食気に勝たしめず」とは、則ち是れ君臣佐使分量の意思なり。〔『言志録』第126条〕

【意訳】
『周官』という書物には、食医という飲食を司る役職についての記載がある。飲食はすべて常用の薬と視るべきである。「飯はどれだけ精白でもよく、肉の切り身はどれだけ細くてもよい」とは、食事を作るときには丁寧に注意深くせよという教えである。「飯の腐って味が変わってしまったものや、魚が腐って形が変わってしまったものは食べず。色の悪くなったもの、臭いの悪いものは食わず」とは、素材を精選せよとの教えである。「おかずとしのて肉が多くても、飯よりは多く食べない」とは、主食と副菜とのバランスについての教えである。

【一日一斎物語的解釈】
食事を作る際には、素材を精選し、主食と副菜のバランスを考慮した上で、丁寧かつ注意深く調理することが重要である。これと同じように、仕事においても、注力する製品を決め、その製品を拡販するための施策を綿密に練り上げ、主力製品と新規製品との活動のバランスを考慮した上で、実行に移すべきである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業会議の司会を務めているようです。

「今期のO社の注力製品である結石除去用のバルーンについては、拡販できている人とそうでない人との差が大きくなっている印象だな。売り上げが伸びていない人は、しっかりと他社との差別化ポイントを把握できてるのかな。善久はどうだ?」

「はい。B社に比べて価格メリットがあることでしょうか?」

「価格については、最初にプッシュするポイントではないな。まずは、仕様面で評価を得る必要がある。本田君はどんなアプローチをしているのかな?」

「この商品の特徴は、採石量の多さです。B社に比べて一回の使用で1.5倍の結石を掻き出すことができます」

「そこだよ、善久。まずは、仕様面で優位性を訴え、ドクターの興味を惹いたところで、価格メリットを打ち出すんだ」

「はい。次はそういうアプローチで攻めてみます」

「石崎は、せっかくバルーンを他社から奪った割に全体の消耗品金額が伸びていないな。なにか逆にロストした製品があるんじゃないのか?」

「すみません。昨日わかったんですが、ガイドワイヤーを一部奪回されました」

「そうだろうな。いいか、みんな。注力商品に力を入れるのは当然だ。しかし、その間に他の製品をロストしては、結局プラスマイナスゼロになってしまうんだ」

「はい」

「浴槽にお湯を注ぐことを考えてみてくれ。梅田、浴槽にお湯を満たしたかったら、何をする?」

「はい、お湯の蛇口をひねってお湯を出します」

「そうだな。それで確実にお湯は溜まるか?」

「え、溜まると思いますが・・・」

「風呂の栓が抜けていてもか?」

「あ?」

「せっかく風呂に湯を注いでも、下の栓が抜けていたらお湯は溜まらないんだ。新規製品のPRに力を入れるのはいいが、既存製品を守ることを忘れていては、結局ベースとなる金額は増えないんだ」

「なるほど」

「注力製品に関しては、競合製品との性能的なメリットをしっかり把握する。そして、既存製品に関する競合の動きもしっかりと把握しながら、新規製品をPRする。これが重要なんだ。これが消耗品拡販の基礎だと思って、しっかり頭に叩き込んで欲しい」

「はい!」


ひとりごと

食物に関する章句ですが、思い切ってビジネスへと拡大解釈してみました。

販売の世界では、大きな機械を獲得することに目が向きがちですが、実はいかに消耗品を獲得するかが重要です。

なぜなら、消耗品は売り上げのベースになるからです。

しかし、消耗品の競合は激しく、どうしても価格勝負になりやすいという欠点があります。

その価格下落による消耗戦をいかに回避し、他社と差別化できるかを考えて行動するのが、販売の醍醐味ともいえるでしょう。


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