今日のことば

原文】
亡霊の形を現わすは、往之れ有り。蓋し其の人未だ死せざる時に於いて、或いは思慕に切に、或いは憤恨を極め、気既に凝結して身に遍く、身死すと雖も、而も気の凝結する者散ぜず、因って或いは崇(たたり)を為し厲(わざわい)を為す。然れども聚(あつま)る者は散ぜざるの理無し。譬えば、猶お冬月(とうげつ)水を器に貯うれば、凍冱(とうご)して氷を成し、器は毀(こわ)ると雖も、而も氷は尚お存し、終に亦漸尽(しじん)せざる能わざるがごとし。〔『言志録』第139条〕

【意訳】
幽霊が形を現すことは時にある。その人が生きている時、強い思念、あるいは強い遺恨があると、気が凝縮して身体に広がって死んでもその気が散らない。それが祟りや災いをもたらす。然し、集まったものは必ず散る。冬に器に水を溜めれば、やがて凍結して氷となる。その氷は器が破損してもすぐには溶けないが、最後には次第に溶けてしまうように、幽霊もいつかは消えるものだ。

【一日一斎物語的解釈】
人間の強い残留思念が亡霊となって現れることがあるのかも知れない。しかし、それも氷がやがて水となって消えてしまうように、いつかは消えてなくなるものだ。同様に、強い怒りや憎しみ、哀しみといった感情も時が経てば少しずつ氷解していくものだ。短絡的な行動を避け、心を落ち着けて長期的視点に立った行動を心がけるべきである。


今日のストーリー

営業2課の石崎君がイライラしながら帰社したようです。

「あれ、どうした少年。なんだかご機嫌ナナメな感じじゃないか?」

「最近の運転マナーは酷いですよね。ウインカーを出さずに急に右折する車があったり、いまさっきは強引に車線変更してこっちの車線に割り込んでくる奴もいました。思わずクラクションを鳴らしてしまいましたよ」

「割り込んだ後、ハザードも出さなかったのか?」

「そうなんです。それで余計に頭に来ました」

「俺も短気な方だから、気持ちは分かるが、そういう怒りとか憎しみなんて、時間が経てば消え去るものだ。彼女とのデートのこととか楽しいことを考えて切り替えろ!」

「あの、彼女と別れたんですけど・・・」

「あ、そうだったな。これは失礼」

「そういえば、課長も随分怒りを抑えているんじゃないですか?」

「ジャイアンツのことか?」

「はい。2課のメンバーは毎日、『頼むから今日は勝ってくれと思いながら結果を見てますから」

「ここまで勝てないと、ちょっと達観するな。今は、自分の心を磨くいい機会だと思って日々を過ごしているよ」

「それを聞いてホッとしました」

「お前ら、LINEで我がジャイアンツの結果を共有しているらしいな?」

「それはそうですよ。それが我々にとって一番重要な情報ですから」

「おいおい、俺ってそこまでジャイアンツの勝敗で機嫌が変わるか?」

「全然違いますよ!」

「そんなつもりはないんだけどなぁ。そう思われていたとは、申し訳ない。反省します!」

「このまま優勝できなくても、機嫌が悪くなりませんか?」

「それ、今約束しないとダメ?」

「はい。野球にまったく興味のなかったゼンちゃんも梅ちゃんも私も、今はセ・リーグの結果と順位表だけはチェックしているんです。でも、課長がもう機嫌が悪くならないと約束してくれるなら、そんな無駄な事をしたくないですから!」

「無駄な事って・・・。一緒にジャイアンツを応援しようぜ」

「お断わりします!」

「厳しいなぁ」

「それで、さっきの質問の答えはどうなんですか?」

「やっぱり、今答えないとダメなの?」

「あー、またイライラしてきた!!」


ひとりごと

原文は幽霊に関する記述ですが、さすがに現代となってはあまりに非科学的なので、ちょっと拡大解釈をして人間の感情も一時的なものであるという話に変えてみました。

怒りをコントロールすることを目的に生まれたアンガー・マネジメントの世界では、怒りが芽生えたら、6秒数えると良いと教えています。

たった6秒間待つだけでも、怒りはかなり抑えることができるそうです。

一時的な感情で、即行動に移すことほど危険なことはありません。

小生と同じく短気な方は、怒りは長くは続かないことをよく心に刻んでおきましょう!


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