今日のことば

原文】
経を読む時に方(あた)りては、須らく我が遭う所の人情事変を把(と)りて注脚と(な)すべし。事を処する時に臨みては、則ち須らく、倒(さかしま)に聖賢の言語を把りて注脚と做すべし。事理融会(ゆうえ)して、学問は日用を離れざる意思を見得するに庶(ちか)からん。〔『言志録』第140条〕

【意訳】
経書を読む際には、自身の実体験に即して読むべきである。また事を処理する際には、先ほどとは逆に、聖人や賢人の言葉を活かすべきである。学問をする際には、知識と実践の双方を重んじ、常に日常を離れないという意識をもっておくことが重要である。

【一日一斎物語的解釈】
本を読む時は、自分の経験に照らして読むと得るものが多い。逆に、なにか事を処理する際には、本で読んだ立派な人の言葉を参考にすると良い。読書(インプット)と実践(アウトプット)は常に一対のものであるから、読書は常に実践を目的としたものでなければならない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、新美課長とランチに出かけたようです。

「世の中には、本を何冊読んだかを自慢する奴がいるけど、あれは無意味だよな」

「そうですね。読書というのは、何冊読んだかが大事なのではなくて、どれだけ身についたかが大事ですよね」

「そうだよ。本の内容を自分の経験に照らし合わせて読み、そして本で学んだことを実生活や仕事に活かすことこそ大事だからな」

「実践してこそ読書が生きるということですね」

「うん。実際、俺も古典を勉強するようになって、すごく仕事に役立っている。もし、古典を読んでいなければ、未だに滅茶苦茶なマネジメントをしていただろうからな」

「正直に言いますけど、神坂さんが課長になると聞いた時は、ひっくり返りましたよ。よりによって会社一の暴れん坊をマネージャーにするなんて、平社長も佐藤部長も正気かと思いましたから」

「そこまで言うか? しかし、実際一番驚いたのは俺だったと思うけどな。(笑)」

「『立場が人を育てるという言葉は、神坂さんのためにあったんですね」

「もちろん、課長になった以上、課長らしくしようとは思った。だけどやっぱり佐藤部長のお陰だよ」

「古典に導いてくれたのも部長ですもんね」

「最初の頃は、一斎先生の話ばっかりするからウザイ先輩だと思っていたんだけど、いつのまにか俺もすっかり一斎先生に私淑するようになった」

「そして、西郷課長からは『論語』を学ぶ機会を得た。それも大きいんじゃないですか?」

「そのとおり。『論語』はまさに実践のための古典だよ。サイさんの解説は、俺みたいな馬鹿にも分かり易くて、本当にありがたい」

「こんな小さな会社に、古典に精通した先輩が二人もいるなんてすごいことですよね」

「たしかにな。あの人たちに出会わなければ、俺は一生、古典なんて読まずにいただろうからな」

「でも実際、それを見事に実践している神坂さんは尊敬します。その神坂さんの背中を見て、今は清水さんも変わろうとしている。私もお二人に負けるわけにはいきません!」

「そうだよ。大累も含めて、お互いに切磋琢磨しながら更なるインプットを続けて、それをしっかりとアウトプットにつなげていこう!」

「今日、仕事終りに一緒に本屋さんに行きませんか?」

「お、いいね! ここ一ヶ月忙しくて、書店に行ってなかったからな。どんな本に出会えるか、楽しみだ!!」


ひとりごと

以前にも書きましたが、小生はかつて年間100冊読破を目標に掲げました。

結果的に、なんとか100冊をクリアしたものの、後半はページ数の少ない本を選んだりするなど、やや本末転倒となっていました。

この章句にもあるように、読書は日常生活に即して読み、日常生活に活かしてこそ意味があります。

つまり、活学してこそ、読書と言えるのでしょう。


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