今日のことば

原文】
吾れ書を読むに方(あた)り、一たび古昔聖賢豪傑の体魄(たいはく)皆死するを想えば、則ち首(かしら)を俯して感愴(かんそう)し、一たび聖賢豪傑の精神尚お存するを想えば、則ち眼を開きて憤興(ふんこう)す。〔『言志録』第142条〕

【意訳】
私は書を読む際に、昔の聖人・賢人・豪傑と呼ばれた人たちの体も魂も今はこの世にないことを思うと、うなだれて悲しい気持ちになるが、その精神は今もまったく衰えずに存在していることを思うと、目を見開いて発奮興起するものだ。

【一日一斎物語的解釈】
多くの名言・至言を残した偉人たちはすでにこの世にはいない。それは悲しく残念ではあるが、言葉とともにその人の誠の精神は未だに生きている。それを汲み取り、次の世代へ引き継いでいくのが我々の使命である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、A県立がんセンター消化器内科の多田先生を訪れているようです。

「先生、COVID-19はいつ収束するんですかね? こんな生活がいつまで続くのでしょうか?」

「俺は専門家じゃないから正確なことは言えないが、治療薬ができるまでは、以前の生活には戻らないだろうな」

「治療薬なんてだいぶ先ですよね。タミフルとかリレンザが開発されたのだって、つい最近ですもんね」

「タミフルもリレンザも保険適用となったのは2001年、イナビルは2010年だ。たかだか20年前だよな」

「それまではインフルエンザに罹っても安静にして熱が下がるのを待つしかなかったんですよね」

「そうだな。しかし、世界中の製薬メーカーがしのぎを削っているから、それほど遠くない将来に開発されるだろう」

「それなら良いんですけどね」

「それまでは、三密回避や手洗いうがいの徹底とマスク着用は避けられないだろう」

「やっぱりそうですか。政府も緊急事態宣言以外に打つ手はないんですかね?」

「疫病に関しては、政治でやれることには限界があるだろうな」

「ちょっと疲れてきましたよね。こんなとき政治は無力なのかぁ。もし、一斎先生が生きていたらなぁ」

「バカやろう! 死人に口無しだ」

「それはわかってますけど、今の政治家が頼りないから、つい昔の偉人に聞いてみたくなったんです」

「たしかに佐藤一斎も孔子もとっくにこの世にはいない。しかし、お前はその人たちの精神や誠を学んでいるんじゃないのか?」

「それはそうですけど・・・」

「それなら、彼らがどう考え、どんなアドバイスをするかは想像がつくだろう」

「そうですねぇ、きっと孔子なら、じっと我慢しろとは言わない気がします。もっと積極的に動けと言うでしょうね」

「たしかにじっとしていれば感染のリスクは減るが、経済活動はストップしてしまう。経済を回しながら、感染しても重症化しない仕組みを作り上げていくしかないんだろうな」

「ウィズ・コロナですね」

「そうだな。アフター・コロナはまだ相当先かも知れないな」

「まだまだ酒を飲んで大騒ぎできる日は遠い未来なのかぁ」

「お前も四十を超えたんだろう。この機会にそういう学生みたいな酒の飲み方をやめるんだな!」

「たしかに・・・」


ひとりごと

一斎先生が言うように、歴史上の偉人はもうこの世にはいません。

この言葉を発した一斎先生自身も今はもう天に召されてしまいました。

しかし、『言志四録』や『論語』という古典の名著の中に、そうした偉人の言葉が残っています。

いや、言葉だけではありません。

言葉に乗せた想いまでもが、古典の中に凝縮されているのです。

そうした偉人の誠を読み取ることができるまで、深く古典と向き合ってみましょう!


youkai_hitodama