今日のことば

原文】
博聞強記は聡明の横(おう)なり。精義入神は聡明の竪(じゅ)なり。〔『言志録』第144条〕

【意訳】
人の意見を幅広く聞き強く心に記憶することは、聡明さの広がり(横幅)であって、精密に道義を研究し神妙な領域に到達することは、聡明さの奥行である。

【一日一斎物語的解釈】
多くの書を読み、人の意見を受け容れることは、重要である。しかし、そのままでは自分のものになり得ない。学んだことを深く研究し、自問自答を繰り返して煮詰めた後、行動に移すべきである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、新美課長とランチに出掛けたようです。

「いつの間にかお前も課長らしくなってきたな」

「え、本当ですか? それ、何気に嬉しいお言葉です」

「だって当たり前にマネジメントの話ができるようになったじゃないか。それってお前が俺のレベルに近づいたってことだろ?」

「元々、それほど距離が遠くなかったとも言えますが・・・」

「やかましいわ! あとはそういう可愛くないところが治ると、お前も良い後輩になるんだけどな」

「結局、神坂さんの話って、全部自分中心ですよね」

「げっ、痛い所を突くな。実は、以前に佐藤部長に同じことを言われたよ。もっと他人の意見に耳を貸して、幅広く情報を収集した方が良いってな」

「それがわかってるなら、努力しましょうよ!」

「してるよ! というか、今の会話はちょっとしたおふざけだからな。お前はそういうユーモアを解する力が本当に乏しいよな」

「それが、神坂さんが相手だとどうしても素直に受け容れられないんですよね」

「お前も俺と同じじゃないか。自分と同じタイプの人間とばかりつるんだり、そういう仲間の意見ばかり聞いていると偏るぞ。俺のような真逆の意見の持ち主が、お前には必要なんだ」

「ほら、また自分が王様みたいな言い方をしてる」

「あ、本当だ。(笑)」

「でもたしかに、自分と違う意見って最初は受け入れられないんですけど、後々よく噛みしめてみるとすごく有益だったりしますよね?」

「そうだよな。なにしろ自分の発想にはない世界を教えてくれているわけだからな」

「この前、T市役所に隣接する細井平洲記念館に行ってきたんです」

「あー、俺も一度行きたいと思っていた場所だ」

「小さな館でしたけど、そこにしかない小冊子も売っていたりして、良かったですよ」

「へぇー、今度行ってみる」

「そこで額縁に入った平洲先生の言葉が掲げられていたんです。『学思行相須(ま)って良となす』、感動しました」

「どういう意味?」

「インプットしたら、すぐにアウトプットするのではなく、一度思うこと、つまりじっくりと思索することが大切だ、という意味だと理解しました」

「なるほど、そういうことか。それは俺にとっても凄く為になる言葉だな」

「人から聞いた良い言葉って、ついすぐに人に話したくなりますからね」

「まずはじっくりと自分の中でコトコト煮詰めることが重要だな」

「はい」

「新美、これからも俺の至らない点があれば指摘してくれよな」

「もちろんです。そのかわり気を悪くしたり、殴ったりしないでくださいね!」

「俺がいつ機嫌が悪くなったんだよ!!」

「今です!!」


ひとりごと

孔子は、幅広く情報を収集し、その中から確実なものだけを自分の意見とせよ、と言っています。

この確実なものだけを選び取る作業がとても重要なのです。

これを「思索」と呼びます。

学(インプット)思(施策)行(アウトプット)の3つが揃ってはじめて学問は完成するという言葉があります。

これは上杉鷹山の師とされる儒学者・細井平洲の言葉です。

小生が常に大切にしている言葉でもあります。

ぜひ、皆さんも記憶の片隅にとどめておかれることをお勧めします。


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