今日のことば

原文】
伯魚庭に趨(はし)り、始めて詩礼を聞く。時に年蓋し已に二十を過ぐ。古者(いにしえ)は子を易(かえ)て之を教えば、則ち伯魚は既に徒学せり。而るに趨庭の前、未だ詩礼を聞かず。学ぶ所の者何事ぞや。陳亢も亦一を問いて三を得るを喜べば、則ち此れより前に未だ詩礼を学ばざりしに似たり。此等の処、学者宜しく深く之を思うべし。〔『言志録』第147条〕

【意訳】
孔子の子の伯魚(鯉)が庭を横切ったとき、孔子に呼び止められて詩と礼を学んだかと聞かれた。伯魚はおそらく二十歳を超えていたであろう。昔は互いに子供を取り換えて教育したので、伯魚は既に学問をしていたはずである。しかし、まだ習っていませんと答えた。今まで何を学んでいたのだろうか。門弟の陳亢も一つの質問をして三つの答えを知ることができたことを喜ぶようでは、これより以前に詩や礼を学んでいないようである。こうした点を今の学者は深く吟味すべきであろう。

【一日一斎物語的解釈】
孔子の弟子の陳亢は、孔子の息子で弟子でもある鯉に、父親から特別な教えを受けているかと勘ぐった質問をする。しかし孔子は、儒学を学ぶ上での基礎は、『詩』と『礼』にあるということだけを息子の鯉に教えたことを知る。これによって、師は息子と弟子を差別しないことも学んだという。一方、仕事を適切に処理する上で基礎となるのは、礼儀や心がけであろう。後継者を育成する場合には、この点を疎かにしてはいけない。


今日のストーリー

営業2課の梅田君がスランプからなかなか抜け出せないようです。

神坂課長はそんな梅田君をランチに誘ったようです。

「梅田、苦しんでいるな」

「めちゃくちゃシンドイです。新製品をどれだけPRしても、ひとつも採用してもらえません。自信喪失です」

「どうしたらいいと思う?」

「今日は、それを教えてくれるのかと思っていました」

「スランプから抜け出すことができるかどうかは、梅田自身にかかっているんだ。俺は大したことはしてやれない。せめて昼飯を奢るくらいだな」

「そんなことを言わずに、上司なんですから教えてくださいよ」

「会社から給料を貰っている以上、お前は営業のプロだ。プロなら自分で道を切り開くしかないんだよ」

「冷たいなぁ」

「でも実のことを言うと、俺はあんまり心配していなんだ」

「え、なぜですか?」

「お前は毎朝、元気に挨拶して職場に入ってくるだろう。あれは素晴らしいことだと思う。売れないと自信がなくなる。自信がなくなると元気がなくなって、挨拶も疎かになりがちだ。しかし、お前はいつも最高の挨拶をしている」

「元気さだけは、失いたくないです!」

「仕事で結果を出す人が必ずやっていることを教えてやろう」

「待ってました!」

「それは、礼儀正しくすることと正しい考え方をすることの2つだ」

「正しい考え方ですか?」

「そう。簡単に言えば、損得より善悪だ。売上や利益を稼ぐことより、お客様の課題解決を優先するという考え方だな」

「あー、そこが怪しくなっていたんですね。そういえば、最近は売上と利益のことばかり考えていました」

「そういうのはお客様に敏感に伝わるかならぁ」

「午後に1件アポがあるんですけど、ちゃんとお客様の課題に焦点を当てて話をしてみます!」

「そうだな。そうすれば、すぐにスランプから脱出できるよ。よし、ここは俺の奢りだ」

「課長、ありがとうございます!!」

「梅田、元気なのは好いんだけど、ちょっと声がデカすぎるんだよな。みんな、こっちを見てるじゃないか・・・」


ひとりごと

どんな仕事でもスランプに陥ることはあるでしょう。

そこから脱出するコツは、基本に立ち返ることです。

Back to Basic!と言っても良いでしょう。

初心に帰り、自分の考え方や礼儀を見つめ直してみましょう!


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