今日のことば

原文】
学者当に徳は歯(とし)と長じ、業は年を逐(お)いて広かるべし。四十以降の人、血気漸く衰う。最も宜しく牀弟(しょうし)を戒むべし。然らざれば神昏く気耗し、徳業遠きを致すこと能わず。独り戒むこと少(わか)きの時に在るのみならず。〔『言志録』第163条〕

【意訳】
本当に学問を修めている者の徳は年齢と共に進み、学業は年々広がっていく。四十を超えた人は、血気も衰えてくるので、寝室でのことを慎むべきである。そうでなければ精神も気力も衰えて、学徳の達成が覚束なくなる。寝室での慎みは若いときだけの問題ではない。

【一日一斎物語的解釈】
真摯に仕事に取り組むビジネスマンは年齢と共に仕事の成果も大きくなり、それにつれて人格も磨かれていく。しかし、人間は40歳頃を境に体に衰えが生じる。そこで重要なのが性欲のコントロールである。性欲を妄りにすると、精力も気力も消耗し、仕事の成果も人格も伸び悩むことになる。性欲をコントロールするという慎独の工夫は、なにも若いときだけの問題ではない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTubeで『孔田丘一(こうだきゅういち)の儒学講座』を閲覧しているようです。

「皆さん、あっという間に夏も終わりですな。これでワシもまたあの世に一歩近づいたわけじゃ」

「そう言いながら、百歳まで生きるぞ、この爺さん」

「さて、今日は性欲の話をしよう」

「相変わらず突拍子もない話題だな」

「いいかな、諸君。四十を過ぎても女の尻を追いかけているようでは、人生を棒に振りますぞ」

「四十を過ぎた連中は、よくわかっていると思うが、一気に体力が落ちてくるのがその頃からなんじゃ」

「そんな時にせっかくの力を女に使っていては、仕事は覚束ない。ロクな成果はでませんぞ!」

「若い時にみだりに性欲を洩らすのも問題じゃが、最近の四十代・五十代は元気じゃからな。十分に機能は果たせるじゃろう」

「だからといって、見境なく性行為を繰り返してしまえば、それだけ生きる力、働く力を喪失することになるんじゃ」

「中小企業に働く中年男にそんなチャンスも金もないよ、爺さん」

「自分には縁がないと思って聴いている君! 魔の手はどこから差し向けられるかわかりませんぞ」

「かくいうワシも随分と女では失敗してきたわ」

「こう見えてもワシの四十代・五十代は渋いイケメン中年じゃったからな、ははは」

「自慢かよ!!」

「けっこういい女が近寄って来るんじゃよ。そうなると、つい・・・。なんてことをしていたら、いけませんぞ!!」

「説得力が全然ないよ。(笑)」

「とにかく、精液を大切にしなされ。それが人生成功の秘訣じゃからな

「お、そろそろ今日は終了じゃ。この後、自分より三十歳も年下の女性とデートの予定がありましてな。ははは」

「おーい!!」

「あ、デートと言っても、次の本の出版の打合せじゃがな」

「・・・」

「では、また生きていたらお会いしましょう!」

「やっぱりこの爺さんは、百まで生きるな」


ひとりごと

性欲の問題については、森信三先生も『修身教授録』の中で、一斎先生の言葉と同じようなことを語っています。

たしかに四十歳を過ぎると、体力も気力も一気に落ちてきます。

五十代になると、さらに!!

四十代・五十代で良い仕事をするには、みだりに性欲を洩らしていてはいけないのでしょう。

とはいえ、まったく女性との交わりがないというのも・・・。


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