今日のことば

原文】
天下の体は、交易を以てして立ち、天下の務(つとめ)は、変易を以てして行なわる。〔『言志録』第172条〕

【意訳】
天地自然の本質は、陰と陽の交代によって成り立っており、政治を執り行うときは、万物はすべて移り変わるということを理解しておく必要がある。

【一日一斎物語的解釈】
物事の本質は、陰と陽の交代によって成り立っており、ビジネスを行うときは、何事も移り変わるということを理解して準備することが肝要である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と商談の打ち合わせをしているようです。

「なるほどな。よく考えた戦術だ。石崎の成長を感じられて嬉しいよ」

「ありがとうございます」

「ただ、一点気になることがあるんだよ」

「え、何でしょうか?」

「この考え方は石崎の方は前回の反省を踏まえてはいるが、相手も変化する可能性があることを忘れていないか?」

「あぁ、そうですね。前回もかなり価格的には近づけたので、今回は更に下の金額で来ることを想定して、もっと価格を下げてくるかも知れませんね」

「うん。それに環境も大きく違っているよな?」

「はい、COVID-19感染症が蔓延して、病院の収益も落ちていますから、より厳しい価格を要求される可能性はあります」

「そういうことだよ。ビジネスというのは水物だ。その時々によって変化する。その事を忘れて、自分だけが成長したつもりでいると痛い目に遭うこともあるだろう」

「課長にもそんな経験がありますか?」

「右手では足りないほどある!」

「あの、自慢することじゃないと思うんですけど・・・」

「あ、そうだな。(笑)」

「もう一度、あの時と今とで何が変わったかをしっかりと考えてみます。その上で、戦術を練り直します!」

「頼むぞ、石崎。お前がそうやって若手の先頭を走ってくれると、他の連中も大いに刺激を受けるからな」

「このまま先頭を走り切りたいです!」

「うん。しかし、あまりそれに拘り過ぎるなよ。誰にもスランプはあるし、ライバルが急成長することもある。抜きつ抜かれつの方がお互いに成長するからな」

「はい、ありがとうございます!!」

「あいつは、俺の若い頃に似ているな。いや、俺よりもはるかに優秀かも知れない」

元気よく部屋を出ていく石崎君の背中を見つめながら、神坂課長はそんなことを考えていたようです。


ひとりごと

満つれば欠け、欠ければ満つるのが世の常です。

ビジネス戦略を立てる際に、そのことを忘れて、競合は何も変わらないという前提のもとに戦略を立てるケースを散見します。

こんな戦略では、いざ実行となったところで、何度も修正を余儀なくされるでしょう。

何ごとも変化するということを常に忘れずに戦略を立て、実行すべきなのです。


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