今日のことば

原文】
国家の食貨(しょっか)に於けるは遺策(いさく)無し。園田・山林・市廛(してん)を連ね、尺地の租入を欠く無く、金・銀・銅並に署を寘(お)きて鋳出(ちゅうしゅつ)す。日に幾万計なるを知らず。而るに当今上下困幣して、財帑(ざいど)足らず。或いは謂う、奢侈の致す所なりと。余は則ち謂う、特に此れのみならずと。蓋し治安日久しきを以て、貴賤の人口繁衍(はんえん)し、諸)を二百年前に比ぶるに、恐らくは翅(ただ)に十数倍なるのみならず。之を衣食する者、年を逐(お)うて増多し、之を生ずる者給せず。勢(いきおい)必ず此に至る。然らば則ち困幣(こんへい)(か)くの如きも、亦治安の久しきに由(よ)る。是れ賀す可くして歎ず可きに非ず。但(た)だ世道(せどう)の責有る者、徒らに諸を時運に諉(ゆだ)ねて、之を救う所以の方(ほう)を慮(おもんばか)らざる可からず。其の方も亦別法の説く可き無し。唯だ之を食う者寡く、之を用うる者舒(じょ)に、之を生ずる者衆(おお)く、之を為(つく)る者疾(しつ)にと曰うに過ぎず。而して制度一たび立ち、上下之を守り、措置宜しきを得、士民之を信ずるに至るは、則ち蓋し其の人に存す。〔『言志録』第174条〕

【意訳】
国家の食糧と貨幣に関しては手落ちがあってはいけない。田畑・山林から市場に至るまで、少しの土地でも租税の滞納はなく、金貨・銀貨といった貨幣については造幣局を設けて鋳造しており、その額は毎日幾万円になるか計り知れない。その割には人民は上も下も困窮しており、財貨は不足している。ある人はこれは贅沢のし過ぎであると言う。私はそれだけではないと思う。私が思うには、泰平が久しくなり、人口も増加し、二百年前に比べれば十数倍となっている。衣食を必要とする人民は年々増加するが、供給する者の数は増えていないのであるから、こうなるのは当然のことである。そう考えれば人民が困窮しているのは、泰平の世が長く続いたからであり、喜ぶべきであって、嘆くことではない。ただし、国を導く者は、それを時に任せているだけでは駄目で、救済する方法を考えねばならない。その方策も特別な事ではなく、『大学』にあるように、「働かずに食らう者を減らし、物品使用を節約させ、生産者を多くし、生産のスピードを早めること」である。こうした制度を成立させ、人民がよくこれを守り、その措置が義に沿ってなされ、人民がその制度を信頼するようになるのは、ひとえに人君の双肩に懸かっているのだ。

【一日一斎物語的解釈】
日本は世界一の高齢社会となっている。高齢者は益々増え、それを支える労働力は年々減少していく。国家はもちろん、企業経営者もこれに対して手をこまねいているだけでなく、対策を講じるべきである。ただしその対策は、特別な対策である必要はなく、収支をよく見極め、仕事の効率化を図ることを考えればよい。働く仕組みを作り、社員は幹部から一般職にいたるまでみなそれを適切に遵守し、その仕組みを信頼している状態を築きあげるのは、リーダーである経営者の仕事である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、川井副社長に呼ばれたようです。

「おぉ、神坂。忙しいところ済まないな」

「川井さん、どんなご用件ですか?」

「第5波もほぼ収束して、そろそろ人類も新型コロナウィルス感染症を克服しつつあると見ていいだろう」

「第6波は来ませんか?」

「それはコロナ次第だ。新たな変異株が蔓延するようなことがあれば第6波はやってくるだろう。しかし、ワクチン効果もあり、水際でしっかりと防ぎ切れれば、第6波は来ないかも知れないぞ」

「ということは、いよいよ本格的に経済を回すときが来たんですね」

「今回のパンデミックを受け、国は第8次医療計画で、5疾病5事業に感染症医療を加えて5疾病・6事業を重点的項目とするそうだ」

「新聞で読みました」

「しかし、これは国に任せておけばよいという問題ではない。企業側でも次のパンデミックに備えて、手を打つ必要がある。我々も今回のCOVID-19から多くのことを学んだはずだ」

「はい、オンラインでの会議やセミナーが増えましたし、オンラインでの営業もかなり浸透しました」

「大企業では、出張費が抑制できたことで、かえってコロナ前より利益が出ているところもあるらしい。この流れは、収束後も変わらないだろう」

「そうでしょうね」

「そこで、我々も今一度、社内のすべての仕組みを見直す必要を感じている。まずは入るを量りて出ずるを制すだ。営業側でのコストの中身をよく見直して、無駄なものは省いて欲しい。佐藤にはもう話はしてある。コストの見直しについては、お前を主担当とする」

「私が無駄遣いが多いからですか?」

「ははは。そうなのか? しかし、そういうことではない。佐藤には、Web商談の仕組み導入という別のミッションを与えているんだ

「なるほど」

「我々中小企業は、今後ますます若い労働力の確保が難しくなる。そういう中でより効率的な仕事をすることが生き残るためにも必要なんだ」

「無駄を省き、新しい技術を導入して、今まで以上に効率的に成果を上げる必要があるんですね?」

「そのとおりだ。ぜひ、お前らしい視点で、コストの見直しに着手してくれ!」

「承知しました!!」


ひとりごと

新型コロナウィルス感染症の第5波は収束に向かっています。

この先も予断は許しませんが、しかし、人類は確実にこの新しい感染症を克服しつつあります。

そろそろ本格的に目の前の仕事に着手すべき時です。

しかし、その前に今一度、今回のパンデミックが教えてくれたことを冷静に振り返り、今後に活かすための仕組みづくりを行う必要もあるでしょう。


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