今日のことば

原文】
世に小人有るも亦理なり。小人は小知すべく、不賢者は其の小なる者を識るす。是れ亦天地間是の人無かる可からず。或いは謂う。堯舜の民、比屋(ひおく)封ず可しとは、則ち過甚だし。但だ唐虞の世、小人有りと雖も、(こうこう)として自得し、各おの其の分に安んずるのみ。〔『言志録』第175条〕

【意訳】
世の中に小人物がいるのにも理由がある。小人物は知識が乏しく、愚者は小人物を知って助け合うものだ。世の中にはこうした小人物も必要である。ある人は「堯舜の時代の人民は皆大名に封ずることができるほど立派であった」と言うが、これは大きな誤りである。堯舜の時代には、小人物があっても、みな広大自得しており、各人が自分の分を知り、そこに安んじていたのである。

【一日一斎物語的解釈】
会社の中にはやや能力が劣る者もいるが、彼らの存在もまた重要なのだ。「ウチの会社には優秀な人材が少ない」と嘆く者があるが、これは大きな間違いである。皆が優秀にみえる組織というのは、上に立つものが立派で、下にいる者は上長を尊敬し、自分の役割をしっかりと果たしている組織なのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、元同僚西郷さんが主査する読書会に参加した後、西郷さんと二人で一杯やっているようです。

「今日初めて参加した夏井さんという人は、すべて矢印が相手に向いている印象でしたね」

「あの人はまだマネージャーに成りたてで、意欲が空回りしているんじゃないのかな」

「今日のサイさんは、かなりあの人の事を意識して話をしていましたよね?」

「うん。ただ、あまり響いてはいなかった気がするね」

「私もそう感じました。自分の部下はみんな能力が低くて、自分はツイていないなんて、どうしてあんなことが言えるんですかね?」

「その人たちがいなければ、その組織は成り立たないのにね」

「だいたい、メンバーが各自の役割をしっかりと果たすような組織には、かならず優れたリーダーがいるはずです。彼は暗に自分が暗愚なリーダーだと認めてしまっているんですよ」

「しかし、それには気づいていなかったね」

「普通なら、自分みたいな未熟なリーダーについてきてくれるメンバーには、感謝こそすれ、あんな馬鹿にしたような言葉は吐けませんよ」

「人にはそれぞれに分がある。高い能力を持つ人もいれば、それほどでもない人もいる。でも、そういう人たちがお互いに助け合いながら、一つの目標に向かって進んで行くのが組織だよね」

「はい、そしてリーダーはそれぞれのメンバーが働きやすい環境づくりを常に意識すべきなんです!」

「神坂君、立派になったね」

「あ、たしかに昔の私は、どちらかといえば、夏井さんタイプだったかなぁ・・・」

「残念ながら、否定はできないな」

「サイさん!(笑)」

「夏井さんはこれからも参加してくれると良いんだけどね。マネジメントなんて、自分の思い通りにいかないことの方が多いことを知って、この読書会での学びを活かしてもらえたら嬉しいんだけどね」

「自分の事になると感情的な話し方をする人でしたけど、他の人が話しているときは、けっこううなずきながらメモも取っていましたよ」

「うん、そこに望みがあると思ったんだよ」

「大企業に勤めている人だし、優秀な方だと思うんですよね。だからこそ、サイさんの言葉から真摯に学んで、成長して欲しいですね!」


ひとりごと

人には生まれつきの能力の違いがあります。

これを分と言います。

組織とは、そうした様々な分を持った人が集まって出来上がっています。

その人たちは偶然にそこに集まったのではなく、必然としてそこにいるのです。

だからこそ、リーダーは各自の長所にスポットを当て、互いに助け合い、成長する組織をつくるべきなのです。


shikaru