今日のことば

原文】
聡明睿智にして、能く其の性を尽くす者は君師なり。君の誥命(こうめい)は即ち師の教訓にして、二無きなり。世の下るに迨(およ)びて、君師判る。師道の立つは、君道の衰なり。故に五倫の目、君臣有りて師弟無し。師弟無きに非ず。君臣即ち師弟にして、必ずしも別に目を立てず。或ひと朋友に師弟を兼ぬと謂うは悞(あやま)れり。〔『言志録』第177条〕

【意訳】
聡明叡智であって本性をいかんなく発揮できるのは君主と師匠としての性格を兼ね備えた人物である。君主の言による命令は、そのまま師の教えでもあって、別のものではない。後世になると君主と師とが分れてしまった。師の道が立つということは、君主の道が衰微したことになる。それ故に五倫の徳目には君臣の義はあっても、師弟については触れられていない。師弟という関係がないのではなく、君臣の関係が即ちそのまま師弟の関係を意味しており、あえて別に立てる必要がなかったからである。ある人が朋友の関係が師弟関係を兼ねると言っているが、大きな間違いである。

【一日一斎物語的解釈】
儒学の教えの中に五倫(君臣の義、父子の親、長幼の序、夫婦の別、朋友の信)がある。この中に師弟関係の記載がないのは、かつては君主が師匠の役割を兼ねていたからである。つまり、人の上に立つ者は、人を指導するだけでなく、人間力を磨いて人の鑑とならなければならない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋に居るようです。

「以前、サイさんから孟子の言う五倫の中に師弟関係がないのは、元々君臣の関係が師弟関係を兼ねていたからだ、と一斎先生は理解していたんですね」

「うん。ところが時代が経つにつれ、君臣の関係が師弟関係と呼ぶには大きくズレてきたんだろうね」

「はい。ただ、多くの学者さんは、朋友の関係の中に師弟関係が含まれると解釈しているらしいですね」

「うん、もちろんどちらが正しいということは決められないんだろうけどね」

「部長は、やはり一斎先生の意見を尊重しますか?」

「そうだね。一斎先生に私淑している私としては、そういう読み方をしてしまうね」

「私も、師弟関係が友人の関係に置き換わるというのは、肚に落ちにくいですね」

「やはり、上司は師であれ、という方が良いよね」

「はい。それにその方が自分としては、身が引き締まりますしね」

「私もこの言葉に初めて触れたときには、同じように感じたよ」

「だいたい、上司と部下が友達のような関係になったら駄目ですよ。それじゃ、肝心な時に厳しい指導ができないじゃないですか!」

「ははは、そうだね。上司や師は、どこかに威厳のようなものがないとね」

「たしか『論語』に、『其の身ただしければ、令せずして行なわれ、其の身正しからざれば令すと雖も従わず』とありました。わが身を正して、尊敬される上司でなければ、指示をしたところで聞いてもらえないと思うんですよね」

「だから、我々は学び続けなければいけないんだね」

「私がこうして学ぶことを覚えたのは、部長のお陰です。私にとっての部長がそうであるように、メンバーにとって私が尊敬に値する上司になれるよう精進します!」

「私も神坂君が後ろからすごい勢いで追いかけてきてくれるから、学ぶことを止めることができないよ」

「では、そのまま逃げ続けてください。ずっと追いかけ続けますから!」

「『壮にして学べば、則ち老いて衰えず』だね」

「そうでした。なんとか衰えない老年期を迎えます!!」


ひとりごと

現代は縦型の組織ではなく、フラットな組織が理想だとされます。

たしかに、上司が怖くて逆らえないというのでは、いけません。

しかし、やはり下の者が上位者を尊敬できる環境が理想的なのではないでしょうか?

あくまで強制ではなく、自発的にメンバーがリーダーを見習う。

そんなリーダーを目指しましょう!


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