今日のことば

原文】
虚実強弱を弁じて、而る後、剤投ず可し。時世習俗を知って、而る後、政施す可し。〔『言志録』第179条〕

【意訳】
薬を与える場合には、その人の体質が虚弱であるのか、強壮であるのかをよく見定めた上で与えるべきである。同様に政治を行なう場合も、今の世の中の風俗や慣習をよく把握した上で手を打たなければならない。

【一日一斎物語的解釈】
患者の体質をよく把握して投薬すべきであるように、ビジネスにおいても、まず自社と競合の現状や市況をよく把握した上でマネジメントを行わねばならない。

今日のストーリー

今日の神坂課長は、石崎君が犯したミスについて叱責しているようです。

「お前、前にも同じことをしたじゃないか。なぜ、伝票を切る前に、数字をしっかり確認しないんだよ!」

「一応、確認したつもりなんですけど・・・」

「つもりだろうが何だろうが、結果的に同じミスをしたんだから、それはやってないのと同じだ!!」

「そう言われたら、何も言い返すことはできません」

「そりゃそうだ。言い訳を聞いたところで、お互いに何のメリットもないからな」

「はい・・・」

「それで、今後はどうするんだよ?」

「はい、これからはしっかり確認します。二度と同じミスはしません!!」

「頼むぞ!」

「神坂君」

ここで佐藤部長が声を掛けたようです。

「ちょっと、いいかな?」

神坂課長は佐藤部長の部屋に入って行きました。

「同じミスを繰り返す部下に対して、次はしっかりやれと指示するだけでは宜しくないんじゃないかな?」

「はぁ」

「なぜ、こういうミスが起きたのか。それを色々な角度から考えてみる必要があるのでは? もちろん、石崎君自身にも考えさせないといけないしね」

「たしかに、そうですね。ただ、気合入れろ! はい、気合を入れます! なんて問答では、また同じことになりかねませんね」

「うん。発伝をしたのは、事務員さんよね。石崎君だけでなく、担当の事務員さんとも一緒に具体的な対策を考えた方が良いんじゃないかな?」

「そうですね。今回のミスの根本原因を探って、そこに具体的な対策を打つ必要がありますね。事務の鶴見さんにも入ってもらって打合せをします」

「万病に効く薬はない。名医と呼ばれるドクターは、患者さんの様々な病気の因子を探って、最適な薬を投与するよね」

「仰るとおりです。もう少しで藪医者ならぬ、藪上司になるところでした。さっそく、石崎と鶴見さんと打ち合わせをします!!」


ひとりごと

トラブルの再発防止を図る際、意外と「二度としません!」・「次はちゃんとやります!」という言葉だけを頼りにするケースが多いのではないでしょうか?

これでは、寝坊した人の再発防止策として、「目覚まし時計の数を増やします」という愚策を承認するようなものです。

寝坊の原因は目覚ましの数ではないでしょう。

なぜ、寝坊したのか? 

睡眠時間はしっかりと取れているのか? 

ストレスで眠れないということはないのか?

あるいは、夜遊びが原因ではないのか?

様々な要因を把握して、適切な策を講じなければ、胃潰瘍が原因の腹痛に頭痛薬を出すようなもので、症状が改善されるはずはありません。


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