今日のことば

原文】
雅楽の秘訣は、声音節奏の外に在り。尋常の伶工(れいこう)、固より知るに及ばず。唯だ大師或いは与に語る可し。故に孔子之に語る。聖人は天地万物を以て一体と為す。故に其の作る所の楽も、亦自ら天地と流れを同じくす。春気始めて至り、万物栄に向う。諸を翕如(きゅうじょ)に見る。暢茂条達(ちょうもじょうたつ)して、大和畢(ことごと)く呈(あら)わる。諸を純如に見る。結実形を成し、条理明整なり。諸を皦如(きょうじょ)に見る。外に剥落して、内に胎孕(たいよう)す。諸を繹如(えきじょ)に見る。蓋し其の妙の四時と其の序を合する者有ること是の如し。唯だ夫子能く之を知る。故に語りて以て其の秘を洩せり。然らずんば、大師は既に是れ大師なり。声音節奏は、彼れの熟講する所なれば、夫子と雖も烏(いずく)んぞ能く倒(さかさま)に之に誨(おし)えんや。〔『言志録』第210条〕

【意訳】
雅楽の妙は声音や韻律にあるのではなく内面的なものにある。楽員には分らず楽長は理解しているであろう。孔子が楽長と語ったことがある。聖人は天地万物を一体とみているので、作る音楽も自然の階律と一致している。だから、春の気を感じ万物が繁茂を始め、それを音楽では五つの音が合唱していると表現する。夏になると、草も木も葉も伸びて大和合の状態となる、音楽ではこれを八音の完全調和と表現する。秋の結実は子孫の為に責任を果たす条理が整うので楽では明らかと表現する。冬、落葉するが内には春の気も孕む、これを音楽では絶えない状況と云う。楽の秘訣は四季とその順序が同じことにある。孔子だけがこの事を知悉していたので楽長に洩らしたのである。若し、孔子以外がこの事を知っていたならば、専門家の楽長に孔子が音楽の秘訣を教えるという逆ごとは無い筈だ。

【一日一斎物語的解釈】
オーケストラの演奏には、マネジメントにも参考になる点が多い。
孔子の説明をビジネス的観点で捉えると、
翕如:スタートダッシュ          必要なもの ex.キックオフ会議など      
純如:ベクトル合せ              必要なもの ex.ミッション、行動指針など      
皦如:ベストを尽くす            必要なもの ex.勇気づけ、個人面談など      
繹如:継続的な達成              必要なもの ex.適切な評価、報酬など
と理解することができる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、元同僚の西郷さんと飲んでいるようです。

「この前、初めてオペラを生で聴いたんですけど、想像以上に感動しました」

「へぇー、神坂君はたしかロックが好きだったよね?」

「ロックとブルースですね。たぶん家にあるCDの数は、2000枚を超えていると思います」

「凄いねぇ。私はクラッシックが好きでね。たぶんLPとCDを合わせたら5000枚はあるんじゃないかな」

「すごいなぁ。でも、クラッシックは聴かないんですよね。そういえば、孔子が楽団の団長さんと深い音楽談義をしている章句がありましたね」

「よく知ってるね」

「以前に読んだときに、自分なりにこんな風に理解したんですけど、聞いてもらえますか?」

「ぜひ聞かせて欲しいね」

「孔子は、翕如(きゅうじょ)・純如・皦如(きょうじょ)繹如(えきじょ)という言葉で音楽を表現していますよね?」

「その通り!」

翕如というのは、各楽器が一斉に起こること。要するに、各メンバーが『よし、やるぞ』という気持ちになって、しっかりと営業活動を始めることではないか? 純如というのは、相互の楽器の調和のこと。いわゆるハーモニーですね。これは、メンバーが皆連動して動くチームセリングを意識すれば良い。皦如いうのは、各楽器が調和されている中で、しっかりとそれぞれの音が明確に聞こえてくる状態。これはメンバーみんながベストを尽くしている状態と見立てていい。最後に繹如というのは、それらの楽器のハーモニーが綿々と続いていく状態のこと。つまり、我々営業部門で言えば、結果を出し続けている状態を指すと理解してよい。どうですか?」

「素晴らしいね。その解釈は斬新で面白い。今度、その章句を解釈するときは、神坂君の解釈も披露しよう!」

「いやいや、これはいわゆる超訳ってやつです。正しい解釈ができているとは思えません」

「古典の解釈に正解はない、それが私の考え方なんだ。古典を読み、そこから新しい知見を取り出すことができたなら、それに勝る古典の読み方はないんだ」

「そうですか、ありがとうございます。しかし、実際に音楽で体感してみたいなと思うようになりました」

「じゃあ、今度ウチに来て、まずはレコードを聴いてごらん。ある程度、予習ができたらコンサートで生オーケストラを聴きに行こうじゃないか」

「いいですね。オペラも新鮮だったので、きっとクラッシックのコンサートからも得るものが多いんじゃないかと期待しちゃいますね」

「どんなことからでも、学びに変えようとする神坂君の姿勢は素晴らしい。私も見習わないとね!」

「サイさんのご指導の賜物です!!」


ひとりごと 

この章句の理解は超難解です。

前回に引き続き、超訳で逃げますことご容赦ください。


孔子が音楽や詩から政治の在り方を説いたように、どんなことからも学ぶことができるはずです。

いやむしろスポーツや音楽から教えられることの方が多いかも知れません。

だからこそ、スポーツ観戦はやめられませんし、音楽鑑賞も楽しいのでしょうね。


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