今日のことば

原文】
須らく知るべし。親在(いま)す時は、親の身は即ち吾が身なり。親没して後は、吾が身即ち親の身なりと。則ち自愛の心を以て親を愛し、敬親の心を以て自ら敬せざるを得ず。〔『言志録』第211条〕

【意訳】
以下のことはしっかりと理解しておかなければならない。親が存命中は、親の身はそのままわが身であり、親が他界した後は、わが身はそのまま親の体でもあるのだ。つまり自らを愛するように親を愛し、親を敬する心でわが身を敬するようでなければならない。

【一日一斎物語的解釈】
自分の身体は親から受け継いだものである。親が生きている間は親の身体をわが身のようにいたわり、親が亡くなった後は、わが身を親の身体だと思って日々親を愛敬すべきである。こういう意識を持っている社員は上司も愛敬し、社業に貢献するはずである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、読書会で知り合った人事コンサルタントの丸川さんと食事をしているようです。

「神坂さん、御社はどういう軸をもって新卒社員さんを採用しているのですか?」

「軸ですか? どうなんだろうな。同期の鈴木に聞かないと明確には答えられないですねぇ」

「あれ? 神坂さんは面接官もされるとおっしゃっていましたよね?

「はい、一応ですけど…」

「そういうことでは、良い人材は採用できませんよ!」

「そ、そうでしょうねぇ…」

「先ほど私はよい人材と言いましたが、この『良い』という言葉が曲者です。どういう人材が欲しいのか、欲しい人材こそが良い人材なわけです」

「なるほど。そうなるとどの会社でも当てはまるような万能の軸はないということですね?」

「基本的にはそうです。営業職が欲しいのか、事務職が欲しいのかによっても違いますし、そもそもメーカーとディーラーでも違ってくるでしょう」

「うちはディーラー、つまり商社ですから、営業職を採用するケースが大半です。まずは会社全体でどういう人材を取りに行くかを決めないといけないのですね」

「そのとおりです。しかし、ただひとつ万能の軸があります」

「え、それはぜひ知りたいです!!」

「親御さんを大切にしているかどうかという軸です」

「あ、そういえば同期の鈴木がそんなことを言っていました」

「ほぉ、それは素晴らしい。私達は親がいなければ生まれていない存在です。我が身を生んでくれた親の身体を我が身と同じように大切にしているか子なら、無条件で採用すべきでしょう」

「なぜ、親孝行の子なら無条件で採用して良いのですか?」

「親を思う気持ちが強い子は、入社してからも上司や先輩を大切にします。少なくとも上司や先輩に楯突くようなことはないでしょう」

「なるほど」

「そして自分の身体は親の身体でもあると考えますから、無理や無茶をしません!」

「私の場合、親には散々迷惑をかけてきました。聞いていて恥ずかしくなります…」

「あくまでもひとつの軸ではありますが、間違いないものです。ご両親の年齢はもちろん、趣味や好きな食べ物などをスラスラと話せるような子がいたら、即採用すべきです」

「鈴木からそこまで具体的な指示をもらったことはなかったので、一度話し合ってみます」

「神坂さん、いつの時代も人材は少ないものです。だからこそ、闇雲に採用するのではなく、欲しい人材の要件を明確にして採用活動をしなければいけないのです」

「はい。なんだか急に親に電話したくなってきました!」

「ははは。神坂さんも親孝行な息子さんのようですね(笑)」


ひとりごと 

『論語』を開くと2つ目の章句として目に飛び込んでくるのが、有若(有子)のことばです。

其の人と為りや、孝悌にして上を犯すを好む者は鮮なし。上を犯すを好まずして亂を作すを好む者は未だ之れ有らざるなり。

訳は、「その人柄が、家に在っては、親に孝行を尽くし、兄や姉に従順であるような者で、長上に逆らう者は少ない。長上に好んで逆らわない者で、世の中を乱すことを好むような者はない」となります。

我が身は父母の遺体だと捉えるような若者がもしいるなら、即採用しましょう!!


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