今日のことば

原文】
君に事えて忠ならざるは、孝に非ざるなり。戦陣に勇無きは、孝に非ざるなり。曾子は孝子、其の言此の如し。彼の忠孝は両全ならずと謂う者は、世俗の見なり。〔『言志録』第216条〕

【意訳】
君主に仕えて忠義を尽せないのは、孝とは言えない。戦場で勇気を起さないことも、孝とは言えない。孔子の高弟である曾子はそう言っている。忠と孝を共に尽くすことはできないという人がいるが、世俗の意見に過ぎない

【一日一斎物語的解釈】
上司に仕えて忠義を尽せないのは、孝とは言えない。また、自分が任された仕事に対して勇気を発揮できないことも、孝とは言えない。忠と孝は別のものではない。どちらも自分の全力を尽くすという意味では同じ徳目なのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋にいるようです。

「『論語』には親に孝を尽くせないようでは、主君に忠を尽くすことは覚束ない、といった言葉がありますよね。あの言葉は衝撃でした」

「神坂君が会社で問題行動をした原因はそこにあったと気づいたんだっけ?」

「部長に問題行動と言われると、それもグサッときますけど、そのとおりです」

「あ、ごめんね」

「たしかに親孝行な子で、会社で上司に楯突いているような人はいないでしょうからね」

「そうだよね。しかし、会社に入ってから上司に楯突くのはいけないけど、仕事で成果を出せないことも孝とは言えないよね」

「え、なぜですか?」

「会社で良い仕事をして立身出世することは、親御さんを誇らしい気持ちにさせるだろうからね」

「なるほど。逆の場合は、親としては歯がゆいし、残念に思うわけですね」

「うん。全ての親御さんがそうだとは言わないけれど、自分の育て方が悪かったのだろうかと自分を責める親御さんもいるかも知れないよね」

「そうかぁ。私は自分の子が社会人になるまでは、親として責任をもって育てるべきだとは思いますけど、その後に仕事で成功するか否かは子供の問題だと思うし、正直元気でいてくれればそれで良いですけどね」

「それが親の本心かも知れないね」

「はい。それでも、やっぱり息子が会社で出世したと聞けば、それを嬉しく思わない親はいないでしょうけど」

「神坂君は、言葉遣いや行動は乱暴だったけど、なぜか上司や先輩に可愛がられるところがあったよね」

「そうでしょうか?」

「きっと、神坂君自身が思っているほど、親不孝な子供ではなかったんじゃないかな」

「そうだといいですけど…。母からはよく親不孝者のドラ息子と言われて育ちましたから(笑)」

「ははは、どうやら神坂家は皆さん口が悪いんだね!」

「あ、それだけは間違いありません!!」


ひとりごと 

儒学では、孝と忠は両立するものと捉えます。

対象が親か上司かというだけで、目上の人を敬い、時に愛することに変わりはないということでしょうか?

愛のない敬はなく、敬のない愛もない、と小生は思っています。

上司を親のように敬愛してもらうためにも、上司は部下を我が子のように育てていく必要があるのでしょう。

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