今日のことば

原文】
物には栄枯有り、人には死生有り。即ち生生之易なり。須らく知るべし、軀殻(くかく)是れ地、性命是れ天なるを。天地未だ曾(かつ)て死生有らずば、則ち人物何ぞ曾て死生有らんや。死生・栄枯は只だ是れ一気の消息盈虚(えいきょ)なり。此れを知れば、則ち昼夜の道に通じて知る。〔『言志後録』第27章〕

【意訳】
物には栄枯盛衰があり、人には死生がある。これはすなわち易(移り変わり)である。以下のことを知っておかねばならない。人間の身体は地のものであり、性命は天のものである。天地には死生はないのであるから、人間にも死生などはないのである。死生や栄枯というのは、気が消えたり現れたり、満ちたり欠けたりしているに過ぎない。このことを理解すれば、そのまま昼夜の道に通じたといえよう

【一日一斎物語的解釈】
万物の盛衰も人間の生死も昼夜の交替と同じようなものである。それを理解していれば、自分の周囲に起る出来事に一喜一憂することはない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTubeチャネル『孔田丘一の儒学講座を視聴しているようです。

「諸君は死ぬことが怖いですかな? ワシはもうこの歳じゃて、死ぬことなど露ほども怖くないですぞ」

「そもそも『死生命有り、富貴天に在り』と『論語』にもある」

「死生も富貴も我々の力だけではどうにもならんことなんじゃ」

「ところが今のご時世、自分でどうにもならんことに悩み、時には命を落とす者までおる。なんと命を粗末にすることか!」

「生まれたら必ず死ぬ。栄えれば必ず衰退する。これが道理なんじゃ」

「それは、昼の次には必ず夜がくるのとまったく同じ道理なのですぞ!」

「諸君らは、夜を無理に昼間にしようと努力しますか? 昼の太陽をなんとか沈めようと考えますか? 考えはせんじゃろ」

「それなのになぜ、死を恐れるのか? いま生きていることに感謝して、いまできることに全力を尽くせば、それで良いではないか!」

「必要以上に富や地位を求めて何になる? 地位など、いつかは必ず手離さねばならぬのですぞ!」

「仮に富や地位を手に入れても、それを維持し続けようなどとは思わんことじゃ。そんなものは空に浮かぶ雲みたいなものじゃ。風が吹けば、どこかへ消え失せてしまう」

「人にはすべて分がある。その分を越えた地位や富は手に入りはしない。それも道理じゃからの」

「だから、繰り返すが、自分の分の中で、最善を尽くしなさい」

「自分の為ではなく、誰かの為に力を尽くしなさい」

「そうしたところで、富や地位は手に入らんかもしれん。しかし、もっと大事なものを手に入れることができるじゃろう」

「それは何か。感謝の言葉じゃよ。『ありがとう』という言葉と笑顔を受け取ることができる」

「これこそが最高の報酬であることに気づけば、くだらんものに惑わされることもなくなるはずじゃ!」

「たくさんの『ありがとう』を受け取る人は、お金持ちにはなれなくても、お人持ちにはなれる」

「たくさんの人が集まってくる。孔子がそうであったようにな」

「移り変わるものを追い求めず、本当に大切なものを手に入れることに力を尽くしなさい」

「富や地位では幸せにはなれないんじゃ」

「それは『裕福であって、『幸福ではない」

「これからは、幸福を追い求めなさい。それには、人の為に最善を尽くすしかない」

「幸福な人は、死が訪れても平然とそれを受け容れるじゃろう。しかし、裕福なだけの人は、その時になって後悔するんじゃ。自分の周りには信頼できる人間がいないということにな!」

「ちょっと興奮してしゃべりすぎたわい。では、諸君。また会いましょう!」

視聴を終えた神坂課長はPCを片付けているようです。

「もう少し終わり方を工夫できないのかな、この爺さん。無理やり尺に押し込んでるのが見え見えだよ(笑)」

「それにしても『裕福より『幸福』を求めるという話は腹に落ちたな。爺さん、ありがとう。また勉強させてもらいました」


ひとりごと 

朱子の唱える理気二元論に基づいた一斎先生の章句でしょう。

そのままではストーリーにしにくいので、今回も超訳でお許しください。

どうせいつかは死ぬのなら、今生があることを楽しみませんか?

富や地位を手に入れること、つまり裕福を目指すより、幸福を目指しませんか?

どうせ一度しかない人生なのですから。


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