今日のことば

【原文】
気魄の人の認めて以て中と為す者は、固(も)と過ぎたり。而も其の認めて以て小過と為す者は、則ち宛(あたか)も是れ狂人の態なり。愞弱(ぜんじゃく)の人の認めて以て中と為す者は、固(も)と及ばずして、而も其の認めて以て及ばずと為す者は、則ち殆ど是れ酔倒(すいとう)の状なり。〔『言志後録』第30章〕

【意訳】
気の強い人が中だとみなすものは、もともと過ぎたものであり、やや過ぎているとみなすものは、ほとんど狂人のようなものである。気の弱い人が中だとみなすものは、もともと及ばないものであり、及ばないとみなすものは、ほとんど酔いつぶれて何もできないようなものだ。

【一日一斎物語的解釈】
強気の人がすこしやり過ぎだなと思うときは、大きなトラブルの元となる可能性があるので要注意である。同様に弱気な人が少し足りないなと思うときも、何もせずに成果をライバルに奪われてしまう可能性があるので、要注意である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の売上進捗会議を開催しているようです。

「わかった、石崎としてはAランクで読んでいるんだな?」

「はい、絶対に勝てます!」

「石崎、商談と競馬に絶対はないんだよ!」

「競馬と一緒にしないでください!!」

「それはそうだな。しかし、お前の話を聞くと、とてもAランクには思えないけどな。Aランクというのは現時点で購入確率80%以上だぞ」

「それは、わかってます!」

「本当にわかっているのかなぁ? 俺としては、現時点では数字に加えないが、とにかく慎重に商談を進めて、なんとか受注してもらえると助かるよ」

「なぜ、私の読みどおりに数字に加えてくれないんですか!!」

その後、

「善久、この悴田クリニックの商談はどうなんだ?」

「Bランクで読んでいます」

「それは見ればわかるよ。実際のところはどうなんだ? お前は今期受注できると思っているのか?」

「院長とY社担当者の関係が結構強いので、確率は50%くらいかと…」

「お前としては読むのか、読まないのか、そこをはっきりしろ!」

「難しいと思います」

「わかった。この商談は数字に読むことにする!」

「え?」

会議終了後、雑談コーナーで神坂課長と梅田君が雑談をしているようです。

「なんだか神坂課長は、先輩の意見と逆の評価をしていた気がするんですが…」

「それはそうさ。石崎は強気の営業マンだ。強気なのは悪いことではないが、商談を舐めてかかることがある。最後まで気を抜かずにクロージングさせる必要があったんだ」

「はい」

「しかし、善久は慎重派だ。慎重なのも悪いことではないが、慎重過ぎればチャンスを逃す」

「なるほど」

「だから、石崎の商談は数字に読まないと言って、もうひと踏ん張りさせたかったし、善久には、今が押しどころだと気付かせたかったんだよ」

「先輩の性格に応じて真逆の判断をされたんですか? すごいなぁ」

「上司は部下の性格をしっかりと把握しないとな!」

「私はどちらのタイプでしょうか?」

「お前はCランクの引き合いしかないから、評価のしようがないなぁ」

「そんなぁ~」


ひとりごと 

孔子は、弟子の性格に応じて、まったく正反対の指導を堂々と行っています。

こうした指導こそが、相手に応じた適切な指導であって、決して軸がブレているわけではないのです。

この孔子の指導方法は一般に「応病与薬」と呼ばれています。

医師が患者の病状を適確に診断し、最適な薬を与えるように、弟子の性格に応じて、適切な指導をすることを意味します。

大事なことは、与える薬の効能ではなく、診断にあります。

適確に病気を診断できなければ、薬の効能も期待できません。

まずは、部下や後輩の性格を正しく診断する力を身につけましょう!


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