今日のことば

原文】
精神を収斂する時、自ら聡明を閉ずるが如きを覚ゆ。然れども熟後(じゅくご)に及べば、則ち闇然(あんぜん)として日に章(あきら)かなり。機心酬酢(しゅうさく)の時、自ら聡明通達するを覚ゆ。然れども稔(じん)して以て習と成れば、則ち的然として日に亡ぶ。〔『言志後録』第31章〕

【意訳】
精神のはたらきを抑制してエネルギーを内面に蓄えているときは、自分の聡明さが閉ざされたように感じるものである。しかしそれが成熟してくれば、暗闇の中に日々光明がさしてくる。心をはたらかせて人に交わり応対していると、自分がおおいに聡明になったように感じる。しかしそれを長い間積み重ねて慣れてくると、日に日に自己が崩壊していくことになろう

【一日一斎物語的解釈】
ひとり静かに学び思索するときは、自分の能力が発揮できずに悶々とするかもしれないが、実は着実に力を蓄えているときでもある。一方、アウトプットをしているときは、自分の能力が発揮されて、自分が聡明になったかのように思いがちであるが、実は自分をすり減らしている時でもある。インプットなくしてアウトプットなし、ということをよく理解しておかねばならない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、N大学医学部附属病院の倉庫脇にある休憩室で、Y社の若手社員・丸野さんと雑談をしているようです。

「J医療器械さんは、新卒社員さんも2年目には担当を持つんですよね?」

「そうだよ。ウチは人手が常に足らないから、温室で育てていくわけにはいかないんだよ」

「羨ましいなぁ」

「そうか、Y社の丁稚期間は3年だったね?」

「はい。相当優秀な人は2年で担当を持つこともありますが、私のような凡人は3年下積みが必要なんです」

「気持ちはわかるけど、今の時期を大切にした方がいいよ」

「なぜですか?」

「先輩社員さんについて仕事を学び、分からないことがあれば、自分で調べて知識を増やしていくという作業は、地道で面白くないかも知れない。でもね、そういう時期を大切に、ポジティブに過ごした人は、担当を持った時には大きな花を咲かせることが多いんだ」

「そういうものですか?」

「ウチみたいに、下手に2年目から担当を持つと、傍からは輝いているように見えるかも知れないけど、蓄えた知識が少ないから、すぐに壁にぶち当たってしまうんだ」

「インプットが大事なんですね」

「インプットなくして、アウトプットなしだよ。しっかりインプットしたものを、アウトプットし、アウトプットしたらガソリンが減るわけだから、またインプットしないと走り続けられないんだ」

「御社の若手社員さんは、ガソリン満タンになる前に走り出しているわけですね?」

「そういうことだよ。丸野君は3年後にはガソリン満タンでスタートできる。その点では、ウチの同級生にそれほど劣ることはないはずだよ」

「でも、現場経験では敵わないですよね?」

「たかが1~2年の経験の差なんて、ちゃんと学んでいる人間からすれば、誤差みたいなもんだよ!」

「ありがとうございます。ちょっと、気が滅入っていたんですけど、やる気が出てきました!」

「3年後に担当を持ったら、なるべくウチじゃないところと競合してくれよな」

「ははは。そうですね。特別講義を受けた受講生としては、少しは忖度します!」

「少しか!(笑)」


ひとりごと 

インプットなくして、アウトプットなし。

これは、小生が学びを続ける中で得たひとつの結論です。

インプットだけでアウトプットしなければ意味はないのは当然ですが、アウトプットだけでインプットがなければいつか行動は減退します。

それはあたかもガソリンが切れた車のようなものです。

インプットとアウトプットを共に続けるしか、走り続けることはできないのです。


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