今日のことば

原文】
克己の工夫は、一呼吸の間に在り。〔『言志後録』第34章〕

【意訳】
己に勝つという克己の工夫は、悩まず一呼吸の間に即断即決実行すべきである

【一日一斎物語的解釈】
一瞬のうちに自分との約束を守る覚悟を決める。これが克己の工夫なのだ。

今日のストーリー

今日の神坂課長は、A県立がんセンターの多田先生を訪れているようです。

「神坂、オミクロンが蔓延しているのに、のこのこやってくるんじゃねぇぞ!」

「多田先生、そんなこと言われたって、我々ディーラーには納品があるんですから。そのついでにちょっと顔を出しただけじゃないですか」

「じゃあ、特に用はないんだな?」

「もしお時間があったら、ちょっとお話を聞きたかったんですけど、忙しいならまた来ます」

「どうせ、もう午前の検査は終了したって看護師から聞いているんだろ? ちょっと話をするか?」

「ありがとうございます!!」

「で、今日は何が聞きたいんだ?」

「はい。以前に先生は、修養とは己に克ことだと仰っていましたよね。ところが私のような意志の弱い人間は、いざとなると誘惑に負けてしまうんですよね」

「楽をして生きてきた奴は大概そんなもんだ」

「それは否定できませんが、そんな私でも己に克つには、どうしたら良いのでしょうか?」

「お前の頭であれこれ考えたところで、どうせ大したアイデアが湧くわけでもないだろう」

「酷い言い方だなぁ。私だって、最近は少しは勉強もして、知識を身につけているんですよ!」

「とにかく、あれこれ考えずにスパッと決断を下せ。もっと端的に言えば、やるかやらないか迷ったら、やれば良いということだ」

「瞬間的にですか?」

「そうだ。悩んだり、考え込んだりするから、弱気の虫が騒ぎ出すんだ。だいたい、他人に相談をするときには、実は当人の中で結論が出ているものだろう。それを肯定してもらったり、背中を押して欲しくて相談するんじゃないのか?」

「たしかに、そうかも知れません」

「要するに、自分の中に結論は既にあるんだ。だったら、一呼吸の間にスパッとその結論を肚に落とせばいいんだよ!」

「先生はいつもそうして来たんですか?」

「そうだな。大事な要件ほど、スパッと決断して、即実行してきた。それで大きく道を踏み外したことはないな」

「そうなんですね。修養というと、なにかあれこれ思案しなければいけないように感じていましたが、感即動なんですね?」

「自分を信じて、自分で出した結論をひたむきに実行してみろ。その積み重ねで人は成長していくものだ」

「ありがとうございます。あ、もうすぐ15分になります。お互いに濃厚接触者にならないように、そろそろ失礼します」

「ランチはいいのか?」

「行きたいところですが、食事中はどうしてもマスクを外して会話をしてしまいがちなので、今日は涙を呑んで辞退します」

「そういうことなら、ずっとCOVID-19が続いてくれた方が俺は助かるな」

「いや、もうすぐ収束します! そのときは、是非また鰻でもご馳走してください!」


ひとりごと 

迷いが生じた時、どうすればよいか?

その答えは、実はすでに自分の心の中で明確になっているのではないでしょうか?

だからこそ一斎先生は、一呼吸の間に断じろ!と仰っているのでしょう。

考えてみれば、人の一生は、小さな決断の積み重ねの上に成り立っています。

克己の工夫は、一呼吸の間に在る、とはそういうことなのではないでしょうか?


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