今日のことば
【原文】
火は滅し、水は涸れ、人は死す。皆迹(せき)なり。〔『言志後録』第54章〕
【意訳】
火はいつかは消え、水もいつかは涸れ、人もいつかは死ぬ。これらはすべて大自然の摂理の痕跡である。
【一日一斎物語的解釈】
すべて形のあるものは、いつかは消えてなくなる。この大自然の摂理を忘れてはならない。
今日のストーリー
結局、石崎君は彼女とよりを戻すことができなかったようです。
「少年、そんなに落ち込むなよ」
「落ち込みますよ! こっちはまだ大好きなんですから…」
「止まない雨はない。明けない夜はない。火もいつかは消え、水もいつかは涸れる。そう悪いことばかりは続かないさ」
「この愛だけは永遠だっと思っていたのに…」
「お前は夢想家か? それとも売れない詩人か? 永遠の愛なんて絶対にないよ」
「課長の奥さんへの愛は?」
「どこに落としてきたのかな?」
「夢のない話ですね」
「形あるものはいつか無くなるというが、形ないものもやっぱりいつかなくなるんだな」
「何の話ですか?」
「愛だよ、愛!」
「課長の方が売れない詩人ぽいですよ! 最近、おかしいなと思ってたんですよね。キスしようとしたら、風邪をうつしたくないからイヤ、なんて断わられたりして」
「それ、ミスチルの歌にあったな」
「知りませんよ、いつの歌ですか?」
「そうだ、『Over』って曲だ。気分転換に聴いてみろ」
「そんな古い歌は結構です!」
「なぁ、元気だせよ。晩飯を奢るからさ」
「課長は、たくさん女性にフラれているんですよね?」
「だからさ、それは誰から聞いたんだよ! 俺はそんなにフラれてないぞ」
「大累課長です」
「あの野郎! アイツの方がよっぽどフラれてるんだぜ」
「そうなんですか? どっちも面白そうだな。晩飯食べながら聞かせてください!」
「ちっ、なんで飯を奢った上に、自分の失恋話をしなきゃいけないんだよ!!」
ひとりごと
形あるものは、必ずいつかは消えてなくなります。
同じように、どんなに楽しい想い出も、どんなに悲しい出来事も、いつかは忘れてしまうものです。
「忘れる」という能力は、ある意味で人間には必要不可欠なのかも知れませんね。