今日のことば

【原文】
志気は鋭(えい)ならんことを欲し、操履(そうり)は端(たん)ならんことを欲し、品望は高ならんことを欲し、識量は豁(かつ)ならんことを欲し、造詣は深ならんことを欲し、見解は実ならんことを欲す。〔『言志後録』第55章〕

【意訳】
物事に取り組む気持ちは鋭く、行いは端正であり、品性や人望は高く、見識や度量は広く、学問や技芸の造詣は深いものであり、考察や知見は実あるものでありたい

【一日一斎物語的解釈】
人の上に立つ者は、志気欲鋭、操履欲端、品望欲高、識量欲豁、造詣欲深、見解欲実の6つを強く願わずにはいられない


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の善久君と同行中のようです。

「課長の手帳の最初のページに何か言葉を書き込んでいませんでした?」

「あ、見つかっちゃった? あれはね、『言志四録』の中にある言葉なんだ」

「どんな内容ですか?」

「簡単に言うと、志を鋭く、行動は規律正しく、品格は高く、知識は幅広く、専門分野を極め、思考は実効性を尊ぶ、という内容でな。企業人としては、心に刻んで起きた言葉だと思ったんだ」

「記憶違いでなければ、佐藤部長の手帳にも同じようなことが書いてあった気がしたんですけど…」

「なんだ、バレてるのか。実は、これは部長の真似をしただけなんだ。(笑)」

「やっぱりそうですか。なんか同じような言葉に見えたんですよ」

「他人の善い行いを真似ることは恥ずかしいことではないと思っているよ」

「はい、そう思います。というか、私はむしろ、お二人が手帳の冒頭に書き込んでいる言葉なら、私も真似をしたいと思ったから聞いたんです」

「そういうことか。それなら、後で見せてやるから、書き写したらどうだ?」

「ありがとうございます」

「志、行動、人間性、知識、技術、思考という6つの分野のあるべき理想を書いてあるから、一生大切にできる言葉だと思うよ」

「課長はいつからこの言葉を書き込んでいるのですか?」

「3年前からかな。たしか3年前の1月に部長の手帳にこれが書いてあるのを見つけたんだよ」

「この6つなら、どれが一番大事ですか?」

「すべてだと思うよ。でも、あえて若手営業マンの善久に限定するなら、知識と技術を磨くことかな?」

「やっぱりそこからですか?」

「うん。どんなに人格が優れていて、行動力があっても、製品の知識や営業の技術がないとモノは売れないからな」

「徐々にその辺は身につけて行けばよいですか?」

「うん。しかし、早いに越したことはないぞ。俺みたいに手遅れになって慌てるのはみっともないからな」

「わかりました。しっかり勉強します!」

「お前、なんでそんなに嬉しそうなんだ?」

「だって、部長と課長と同じ文字を手帳に書き込めるなんて、嬉しいじゃないですか!」

「善久、お前は可愛い奴だな。ランチ奢っちゃおうかな!」


ひとりごと
 
以前にも記載しましたが、小生は、この章に出てくる6項目を手帳に書き込んでいます。

非常に簡潔で解りやすい指針を与えてくれるからです。

しかし、あえて今、どの項目に力を尽くすべきかと考えると、55歳をこえた小生としては、志気欲鋭、つまり志を鋭く保つことではないかと思っています。


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