今日のことば

原文】
物其の所を得るを盛と為し、物其の所を失うを衰と為す。天下人有りて人無く、財有りて財無し。是を衰世と謂う。〔『言志後録』第63章〕

【意訳】
物が適所を得たときは盛となり、適所を得ることができなければ衰となる。天下に有能な人材があっても、その所を得なければ人材は無いも同然であり、財産はあっても適正に使用されなければ金が無いのと同然である。これを衰えた世と云う

【一日一斎物語的解釈】
適材適所こそ、企業存続の重要事項である。人材を見極め、もっとも能力を発揮できるポジションを与えるべきである。また、資産についても、ただ溜め込むのではなく、いかに活用できるかを考えるべきだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長とランチに出かけたようです。

「神坂さん、聞きました? RS医療器の花村さんが会社を辞めるらしいですね?」

「あー、俺も昨日聞いたよ。まぁ、彼は相当尖ったキャラだからな」

「でも、あれで結構ドクターの信頼は厚い人なんですよね」

「そうなんだよ。相当過激な話題で盛り上がってるからなぁ」

「天皇がどうだとか、日の丸がどうだとか」

「そうそう。それが意外とドクターにハマるから不思議だよな」

「そういうネタで盛り上がりつつ、実は製品に関しては相当な知識を持っていますよね」

「ドクターにそこを切った方がいいとか平気で言えるのは彼くらいだろう。ただ、今のご時世だとちょっとな」

「会社のウケは悪いとは昔から聞いていました」

「彼を引き上げた志村さんが、先に飛ばされて会社を辞めちゃったからな。あれが彼の運のツキだったんじゃないかな」

「花村さんは、部下の面倒見もよかったみたいですよ」

「うん。彼の下で成長した子を何人か知ってるよ。もっと彼を上手に使えばいいのにな」

「彼を使いこなせる幹部がいなかったってことですかね?」

「どんなに優秀な人材でも、能力を発揮する場所を与えられなければ、ただの人になっちゃうからな」

「時には害悪にすらなりますね」

「その点、俺とお前は幸せだよな。こんなに尖っていても、上手に掌の上で転がしてくれる上司に巡り会えたんだから」

「神坂さんと一緒にされるのは、ちょっと釈然としませんが、たしかにそうですね」

「人を見れば殴りかかっていたお前が、今じゃ人の上に立っているんだもんな」

「それはあなたでしょ! 私は何度あなたに殴られたことか!」

「あれ、そうだっけ? 昔のことだからな。まぁ、俺たちもああいう尖ったキャラをちゃんと使いこなせる上司にならないとな」

「花村さん、ウチで採用しますか?」

「お前が面倒をみるならいいぞ」

「いや、まずは神坂さんにお手本を見せてもらいたいですね」

「もう少し天皇のことを勉強してからにするわ…」


ひとりごと
 
適材適所という言葉は、人材活用において言い古されてきた言葉です。

しかし、人を見る眼が曇っていては、その人材の能力を正しく見抜くことができず、適所に配置することができません。

人の上に立つ人は、つねに公正な眼で、人を観察し見極める力をつけて行かねばならないのでしょう。

せっかく目の前にいる優秀な人材を失う前に!!


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