今日のことば

【原文】
人は多く己の好む所を話し、己の悪む所を話さず。君子は善を好む、故に毎(つね)に人の善を称す。悪を悪む、故に肯(あえ)て人の悪を称せず。小人は之に反す。〔『言志後録』第116章〕

【意訳】
人の多くは自分の好きなことを話し、自分が嫌いなことは話さない。君子と呼ばれる立派な人は善を好むので、いつも人の良い点を称賛する。また悪事を憎むので、敢えて人の悪い点を論(あげつら)うことはしない。ところが凡人はこの逆であることが多い

【一日一斎物語的解釈
リーダーは、メンバーの長所だけを褒め、短所についてはあえて吹聴すべきではない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、やや不機嫌な表情で得意先から戻ってきたようです。

「課長、どうしたんですか? スピード違反で捕まったとか?」

こういうツッコミを入れるのは、もちろん石崎君です。

「やかましいわ、クソガキ! 俺はそう簡単に捕まったりはしないぜ」

「そこは普通、『俺はそんなにスピードは出さないぞ』じゃないですか?」

「気づいたら出ているんだから仕方ないだろ」

「ダメだこりゃ。でも、機嫌はよくなさそうですよ。ジャイアンツは好調なのに」

「N大学で、M社の松原のおっさんと話をしていたんだよ」

「あ、それは不運です」

「だろ? あのおっさんは昔の自慢話と他人の悪口しかネタがないからな。大した会社でもないのに、以前にそこに居たことを自慢げに話すんだよ。結局今はM社じゃねぇか!」

「自慢話に付き合ったんですか?」

「仕方ないだろう。M社からしか買えない商品があって、頼まざるを得なかったんだから」

「そういうことですか。ご愁傷様です」

「その後は部下の悪口のオンパレードだ。人の上に立つ人間は、相手の長所を見て、他人にその長所をはなすもんだよ。欠点や短所は口にしないものなんだ」

「なるほど。じゃあ、課長も外では私のことを褒めてくれているんですね?」

「えっ? も、もちろんだよ。ウチのエースだって言ってるぞ」

「嘘くさいなぁ?」

「バレた? あ、でもな。褒めてもいないけど、悪口も言わないぞ」

「課長もまだまだですね。人の振り見て我が振り直せです。松原さんに会えて良かったじゃないですか」

「たしかに、そのとおりだな。だけど、なんでお前に諭されなきゃいけないんだ?」

「年齢や役職に関係ないく、良いアドバイスはしっかり聞きましょう!」

「なんかムカつく!」


ひとりごと

美点凝視ができたら、その美点だけを他人に語りましょう。

噂話というものは、必ず本人にも伝わるものです。

そして、間接的に人を褒める方が、直接褒められるより嬉しいのが人情なのです。


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