今日のことば
【原文】
読書も亦心学なり。必ず寧静を以てして、躁心を以てする勿れ。必ず沈実を以てして、浮心を以てする勿れ。必ず精深を以てして、粗心を以てする勿れ。必ず荘厳を以てして、慢心を以てする勿れ。孟子は読書を以て尚友と為せり。故に経籍を読むは、即ち是れ厳師・父兄の訓(おしえ)を聴くなり。史子を読むも、亦即ち明君・賢相・英雄・英傑と相周旋するなり。其れ其の心を清明にして以て之と対越せざる可けんや。〔『言志後録』第144章〕
【意訳】
読書もまた心の学問である。必ず心をやすらかにして読むべきで、騒がしい心で読んではならない。必ず心を落ち着けてじっくりと読むべきであって、浮ついた心で読んではならない。また必ず精細に詳しく読むべきであって、粗雑な心で読んではならない。さらにおごそかに読むべきであって、驕り高ぶった心で読んではならない。孟子は読書は尚友(尊敬すべき友)であるとしている。したがって経書を読むということは、厳しい師匠や父兄の訓戒を聴くことであり、歴史書や哲学書を読むということは、名君、名宰相、英雄や豪傑と直接交際するようなものである。それゆえ心を清らかにして書と対峙しなければならないのだ。
【一日一斎物語的解釈】
書物は尊敬すべき友である、と孟子は言う。心を落ち着け、詳細に、厳かに、驕ることなく書と取り組むべきである。そうすれば、古の偉人から直接教えを請うことができ、歴史上の偉人と直接交際することが可能となるのだ。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋に居るようです。
「部長は読書はどこでされますか?」
「私は書斎で読むね。なるべく静かな部屋で、じっくり心を落ち着けて、すべてを受け容れるような清々しい気持ちで本を読むことが多いね」
「なるほど、となると時間帯は深夜か早朝ですか?」
「早朝が好きだな。朝の4時くらいに起きて、少しずつ明るくなっていく部屋で本を読んでいると、とても幸福感を感じるんだ」
「早朝か。私は深夜派なんですよね」
「眠くならない?」
「なります。いつの間にか落ちていることもしばしばで」
「静かな環境で、心を落ち着けて読書をしていると、古の偉人から直接指導を受けているような感覚になることがあるよ」
「一斎先生が目の前で講義をしている感じですか?」
「うん、まさにそれ!」
「うわぁ、いいなぁ。バーチャルでもいいから、そんな環境で学んでみたいなぁ」
「近々そんなビジネスも生まれるかもしれないね。孔子が目の前で講義をしているところに参加するような仮想空間が提供されたりとか」
「面白いですね。孔子と一斎先生の授業には是非参加してみたいです!」
「私も参加したいね!」
「でも、すでに部長はご自身でそんな感覚を経験されているんですね?」
「うん。不思議だよね。歴史書を読んでいるときは、時々歴史上の人物と直接言葉を交わしているような錯覚をすることもある」
「すごいな。部長は、なにも機材をつけずにVRの世界を体験できているんですね」
「もしかしたら、ボケてきたのかな?」
「まさか! やはり早朝の静かな環境で、心が清々しい状態だからこそ、そういう体験ができるんじゃないですか?」
「たしかに、そうだと思うよ。神坂君も朝型人間にならない?」
「そんな体験ができるなら、試してみる価値大ですね!!」
ひとりごと
読書尚友という言葉があります。
これは、読書によって古の聖人や偉人を友とすることを言います。
小生は、残念ながらそんな感覚になったことはありません。
もっと心を静め、すべてを受け容れる清々しい心で書を読む必要性を感じます。
皆様は、いかがでしょうか?