今日のことば
【原文】
瞽目(こもく)は能く耳を以て物を視、聾唖は能く目を以て物を聴く。人心の霊の頼むに足る者此(かく)の如し。〔『言志後録』第151章〕
【意訳】
目の不自由な方は、耳で物を視ることができ、耳の不自由な方は目で物音を聴くことができる。人の心の霊妙さが頼りになるという事例はこのようである。
【一日一斎物語的解釈】
目や耳に頼り過ぎることなく、心をつかってモノを観、聴くことを心がけよ。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行中のようです。
「お客様の心を探るのって難しいですよね? 本音を言っているのか、嘘なのか?」
「他人の心なんて読めるわけないよ」
「え? じゃあ、課長はお客様が買うのか買わないのかをどうやって判断しているんですか?」
「自分が提案している商品がお客様のお役に立てると心から思える提案になっているかどうか、そこがポイントじゃないのかな」
「なるほど。本当にメリットがあると思えば買ってくれるということですね」
「うん。だから俺は他人の心を読むなんてことはとっくに諦めているんだ。でもな、心の眼と耳は大切にしているよ」
「どういうことですか?」
「目の不自由な人は、耳で物を視ることができ、耳の不自由な人は、目で物の音を聞くことができるそうだ。人間の潜在的な力はすごいよな」
「そうなんですか?」
「そもそも仏様に観音様ってあるだろ?」
「ありますね」
「あれ、漢字を思い出してみろ。音を観るって書くだろ?」
「そういえばそうですね!」
「だから、俺も目で見える情報や耳から入ってくる情報だけに頼らないことは気をつけているんだよ」
「音を観ているんですか?」
「実際にできているかと言われるとできちゃいないけど、そういう意識は持つようにしている」
「そうすると、何が変わりますか?」
「そうだなぁ。自分中心の視点ではなく、お客様のことを心から考えられるようになる気がするな」
「心の目と耳ってどうやって使うんですか?」
「俺の場合はね、敢て目線を外してお客様の声を聴く。そして、自分が話しているときに、お客様のことをしっかり視るように意識しているんだ」
「面白そうですね。私も真似していいですか?」
「いいけど、何も見えないとか聞こえないとか文句を言うなよ!」
ひとりごと
人間の五感とは霊妙なものです。
必ずしも目と耳からだけですべての情報を入手しているわけではないでしょう。
特に心の使い方というのは、修養とも直結するため、重要になってきます。
どれだけ使い切れるかはわかりませんが、心を働かせる努力をしていきましょう!