今日のことば

【原文】
能く人の言を受くる者にして、而る後に与(とも)に一言す可し。人の言を受けざる者と言えば、翅(ただ)に言を失うのみならず、秖(まさ)に以て尤(とがめ)を招く。益無きなり。〔『言志後録』第168章〕

【意訳】
よく人の言葉を受け容れる人であってはじめてその人と言葉を交わすべきである。人の言葉を受け容れない人と言葉を交わせば、ただ言葉を失うだけで時間の無駄になるだけでなく、非難を受けることになる。まったく益するところがない

【一日一斎物語的解釈
人の意見を聞き入れる人でなければ、良好な関係を築けないどころか、害を被ることもある。逆に考えれば、人の上に立つ者は、まず部下の意見をしっかりと聞き容れる度量を持たねばならない。


今日のストーリー

「おかえり。遅かったな」

今日の神坂課長は、いつもより遅い時間に帰ってきた石崎君に声を掛けたようです。

「最悪ですよ! M器械の松原部長につかまりました」

「それは最悪だな。あの人と会話をするのは時間の無駄以外の何物でもないからなぁ」

「はい。疲れました」

「あのおっさんは、夕方になると話し相手を探して、業者の溜まり場に来るからな」

「はい。私も情報交換をしようと思って行ったんですけど、松原さん以外に誰もいなかったんです。あの人は嬉しそうに私に手招きしてきました」

「そして、いつもの自慢話か?」

「はい。でも、私の話は上の空なんですよ。自分の話のときは、嬉々としてしゃべるくせに!」

「そういう人だよ、あの人は」

「でも、今日は勉強になりました。他人の意見を聞かない人は、誰からも相手にされないんだなって」

「そうだな。たぶん、溜まり場に誰も居なかったのは、業者がお互いに情報を共有したんだろうな。『溜まり場にM氏出現!』みたいな感じで(笑)」

「そう思うと寂しい人ですね」

「自業自得だけどな」

「やはり、他人の話を親身になって聞いてくれる人でなければ、こっちも話す気がしませんよね。時間の無駄でしかない」

「そうなんだよ。時間を無駄にするだけじゃないぞ。体力まで奪われるからな。あのおっさんの長話に付きあわされた翌日に熱を出す奴は多いらしいぞ」

「本当ですか? でも、分かる気がします。めっちゃ疲れましたから」

「じゃあ、体力をつけるために旨いもんでも食いに行くか?」

「良いですね、行きましょう!」

「どうやら俺はお前の話をちゃんと聞けているってことだな。こうして俺の誘いを断らないんだから」

「いえ、奢ってもらうのに、話しぐらい聞いてあげないと失礼ですから」

「このクソガキが! 頭に来た。今日は徹底的に自慢話をしてやる!!」


ひとりごと

話を真摯な姿勢で聴くことは、容易なことではありません。

誰しも話を聞くより、話しをする方を好むでしょう。

しかし、自分の話をしっかりと聞いてくれると思えば、その人に対して次第に信頼感が醸成されていきます。

「あの人と話すのは時間の無駄だ」と思われないように、相手を思い、相手の話にも耳を傾けましょう!!


kiku_man