今日のことば

【原文】
此の学、意趣を見ざれば、風月を咏題するも亦俗事なり。苟も意趣を見れば、銭穀(せんこく)を料理するも亦典雅なり。〔『言志後録』第172章〕

【意訳】
儒学においては、心の深い働きをしっかりと見ることができなければ、風月を題材に詩を吟じてみても世間の俗事に過ぎない。かりにも心の深い働きを見るならば、お金と穀物を処理する場合であっても高尚で雅やかなものになる

【一日一斎物語的解釈
学問をする上で肝要なことは、心の深い働きを捉えることにある。そのことがわかっていれば、どんな些末なことを処理したとしても、そこに気品が漂うものである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長と一緒に、「季節の料理ちさと」に来たようです。

「ねぇ、ちさとママ。昔から思っていたんだけど、ママの所作にはなんとも言えない気品があるよね」

「あら、神坂君。今日はどうしたの?」

「毎回、ババア扱いしてたら、嫌でしょ?」

「ババア言うな!!」

「でも本当にそう思っていたんだよ。料理を運ぶ仕草とか、ビールを注いでくれるときの雰囲気とか、すごく美しいんだよなぁ」

「神坂君にそこまで褒められると、かえって照れちゃうわ」

「ほら、そういう仕草も可愛い。とても、五十うん歳のババアとは思えないんだよなぁ」

「ババア言うな!!」

「ねぇ、部長。ママの持っている気品はどこから来るんですかね?」

「どうだろうね。一斎先生は、学問をしている人の所作には気品が漂う、というようなことを言っている。それかもね」

「ママは学問を積んでいるってことですか?」

「うん」

「ママは若い頃の話をあまりしてくれないけど、実は相当勉強してきたんだね?」

「さあ、どうでしょう?」

「部長もママの若い頃の話は聞いていないんですか?」

「う、うん。まぁ、そうだね…」

「あれ? 部長は知ってるんだ! なんだよ、ママ。俺にも話してよ!!」

「そうねぇ、今から3年間、一度もババアと言わなかったら、話してあげてもいいわよ」

「そんなの無理だよ! ババアにババアって言えないなんて、旨い料理に旨いって言えないのと同じだよ!」

「だから、ババア言うな!!」


ひとりごと

学問を身につけた人は、どんな小さな仕事であっても、手を抜かないものです。

それゆえ、その処理する姿には、時に気品が漂うのでしょう。

学問とは禍福終始を知って惑わないためにするものです。

その成果は、実はそうした日常の動作にも表れるものなのかも知れません。


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