今日のことば
【原文】
気運に小盛衰有り大盛衰有り。其の間亦迭(たが)いに倚伏(いふく)を相成すは、猶、お海水に小潮有り大潮有るがごとく、天地間大抵、数を逃るる能わず。即ち活易なり。〔『言志後録』第180章〕
【意訳】
気数と運命、すなわち人生のめぐり合わせには、小さな盛衰もあれば、大きな盛衰もあるものである。その間に禍と福とが互いに原因となって生じあう有様は、あたかも海水において小さい潮や大潮があることと同じであり、天地の間の出来事は大抵運命から逃げることはできないものである。それがすなわち活きた易というものである。
【一日一斎物語的解釈】
人生は禍と福との連続である。目の前の出来事に抗うことなく、淡々と受け容れる。それが正しい生き方だと言えよう。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、佐藤部長と同行しているようです。
「あ、このラジオから流れている曲、ビリー・ジョエルの『さよならハリウッド』という曲です。この曲の中の『人生は、ハローとグッバイの連続だ』という歌詞がカッコいいなと思うんですよね」
「英語でいうと、『Life is a series of Hellos ando Goodbyes』だね」
「ご存知なんですか?」
「実は、ビリー・ジョエルの大ファンなんだよ」
「それは意外ですね。そういえば、部長と音楽談義はしたことがないですもんね」
「音楽談義ができるほど、音楽に精しいわけじゃないけどね」
「この歌詞を初めてみたとき、カッコいいなぁと思ったんですよね」
「人生は禍福の連続だと言うところを、ハローとグッドバイに置き換えたワードセンスがさすがだよね」
「はい。『ハロー』って新たな出会いがある時は幸せですし、時には永遠の『グッバイ』もありますからね」
「だからそれを受け容れて、前を向いて歩いて行こう。そんな内容の歌だったね?」
「はい。きっと私の人生もようやく折り返し地点ですから、この先もたくさんのハローとグッバイがあるんでしょうね?」
「間違いないよ。いつかは神坂君と私もグッバイするときはくるだろうから」
「あー、そうですね。それは淋しいな」
「それでもその後にはまたハローがあるんだよ」
「はい。たしか、出会いは必然だというような言葉をちさとママに教えてもらいました」
「『人は出会うべき人には必ず出会う。しかも一瞬遅からず、一瞬早からず』だね?」
「はい」
「でもその言葉には続きがあるんだよ。『しかし、内に求める心なくば、眼前にその人ありといえども縁は生じず』とね」
「なるほど出会いを求めなければ、出会いは生じないんですね?」
「そう。それでもいつも求めたものが手に入るとは限らない。それも受け容れていくんだね」
「人生はそう易々と自分の思い通りにはならないことを忘れずに、目の前の出来事を淡々と受け容れる生き方を目指します!!」
ひとりごと
先日、慶応義塾長の安西祐一郎さんの講演を聞く機会がありました。
その講演の中で、人はなんのために学ぶかといえば、ビビらないようになるためだ、と仰っていたのが印象的でした。
これは、以前から何度もとりあげている『荀子』の「学問とは禍福終始を知って惑わないためにする」という言葉と同じ趣旨ですね。
人生がつねに自分の思い通りに進むはずはありません。