今日のことば

【原文】
三十年を一世とし、百五十年を五世と為す。君子の沢(たく)は五世にして斬(た)ゆ。是れ盛衰の期限なり。五百年にして王者興る有りとは、亦気運を以て言う。凡そ世道に意有る者、察を致さざる可からず。〔『言志後録』第182章〕

【意訳】
中国では、三十年を一世とし、百五十年を五世と捉える。『孟子』にも、「君子の余沢は五世で途絶えてしまう」とある。これは盛衰の期限といえるだろう。同じく『孟子』に、「五百年経てば王者が興る」とある。これが天の気運の巡り合わせであろう。概して政治に我が意を賭けようという者は、よく察しておかねばならないことだ

【一日一斎物語的解釈】
三十年を一世とする見方がある。仮に立派な創業者が創った企業であっても、その余沢はせいぜい五世、百五十年が限界である。それ以上繁栄が続くためには、中興の祖が出てくる必要がある。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、新美課長とランチ中のようです。

「そういえば、老舗の糸山器械が廃業しましたね。たしか、数年前に創業150年を迎えたはずなんですけど」

「『孟子』の言葉に、君子の余沢もせいぜい百五十年、とあるからなぁ。創業者の想いもついに継承されなかったということか」

「直接的にはCOVID-19が原因ではあるみたいですけどね」

「もちろんそうだろう。でも、百五十年経てば、創業を知る者は誰もいなくなる。ということは、会社がなぜ生まれたかを知る者もいなくなるわけだ」

「いわゆる企業のパーパスを見失う時期がそのくらいなんでしょうかね?」

「そういうことじゃないかな。まぁ、ほとんどの企業は10年以内に消えるわけだから、150年続くというのは、凄いことなんだけどな」

「ウチはどうなんでしょうねぇ?」

「まずは、秋に帰ってくるジュニア次第じゃないか」

「そうですね」

「しかし、本当の堪え時は、三代目の時代だろうな。歴史をみると、国や企業は三代目が潰すことが多いからな」

「三代目となると、我々ももう定年した後ですね」

「うん。その三代目にどう帝王学を教え込むかは、ジュニアに懸かっている。そして、そのジュニアの教育には、我々は関与できるんだ」

「ということは、三代目で潰さないために、我々も力を尽くせるわけですね」

「というか、尽くさなきゃダメだろう。平社長の創業の想いをしっかりと受け継ぐように、全力でサポートしないとな」

「はい」

「時には厳しいことも言わなければならないだろうな」

「それは神坂さんにお任せします」

「お前みたいな腰抜けが取り巻きになったら、この会社は終わりだな」

「冗談ですよ。マジでキレないでくださいよ!」

「だったら、今のうちに修行しておけよ。年上の面倒くさい部下がいるだろ。あいつをしっかり指導するんだな」

「清水さんですか…。たしかに、修行どころですね(笑)」


ひとりごと

一世とは三十年を指します。

つまりはジェネレーションギャップとは、30歳の年齢差で生じるということです。

その三十年間には、当然ながら受け継いできたものにも変化が必要になります。

しかし、だからといってすべてを変えようとしてはいけません。

残すべき変えてはいけないものと、変えてよいものをしっかりと弁別する力が必要です。

国や企業が衰退するのも、この弁別を誤ったときなのでしょう。


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