今日のことば
【原文】
応酬の文詩、畢竟人の翫弄(がんろう)に供するは、羞ず可きの甚だしきなり。顧亭林曰く、「文を能くするも文人と為らず、詩を能くするも詩人と為らず」と。此の語太だ好し。〔『言志後録』第209章〕
【意訳】
人と手紙や詩をやりとりすることは、結局は趣味上のあそびとなってしまうことがあるが、これは甚だ恥ずかしいことである。顧炎武が「美文を書いたとしても文人とは言えないし、名詩を作っても詩人とは言えない 」と言ったのは、非常に良い言葉である。
【一日一斎物語的解釈】
知識をひけらかしたり、技術をもてあそぶような文章を書くことは恥ずべきことである。コミュニケーションで大切なことは、自分の心を伝えることにある。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業部特販課の大累課長のデスクにいるようです。
「このはがき、読んでくださいよ」
「どれどれ? ん、なんだこれ? 何が言いたいんだ?」
「でしょ? まったく意味不明なんですよねぇ」
「誰からのはがきなんだ? あぁ、M器械の松原さんか。あの人、話も訳が分からないなと思っていたけど、文章も酷いな」
「カッコいい言葉がたくさんあるんですけど、果たして使い方が合ってるのかどうか(笑)」
「いや、滅茶苦茶だよ。本人は、俺の文章は凄いだろうというつもりで書いてるんだろうけど、結果的にバカさをアピールしてるよなもんだな(笑)」
「面倒なおっさんですよ」
「昔から美文を書いたからといって文人とは言えないって言葉もあるんだ。文人気取りはやめて欲しいな」
「ほんとうですよ」
「で、結局、何が書いてあったんだ?」
「G市に新しい支店を作ったらしいんですけど、そこの支店長を兼務することになったらしいです」
「おいおい、その程度の内容でここまで意味不明の文章が書けるのは、ある意味で別の才能だな」
「これしか文字数がないのに、何回読み返したことか」
「文章ってのは伝わってナンボなんだよな。カッコいい文章を書く必要はないんだよ」
「学のない人に限って、カッコつけたがるんですよね」
「何て言ったって、この業界では危険人物として、誰もが恐れている人だからな」
「それ、話が長いからでしょ? まさか文章まで、ここまでヤバいとは知らなかったですよ」
「しかし、暇なお前じゃなきゃ解読は無理だったな」
「だけどこれ、なんで俺のところに来たんですかね?」
「あぁ、それは簡単だよ。この前、松原さんに会った時にはがきを出すって言ってたから、宛先をお前にしてくれと言っておいたんだ」
「か・み・さ・か・ぁーーっ!!!」
ひとりごと
文書は言いたいことを正しく伝えることが目的のはずです。
でも、ちょっとカッコつけて文章を書きたくなる気持ちってわかりますよね?
ところが、無理をすると、届いた相手に深いな思いをさせることになります。
背伸びせず、シンプルな文章を心がけましょうね。