今日のことば
【原文】
人才に虚実有り。宜しく弁識すべし。〔『言志後録』第211章〕
【意訳】
人の才能には、虚(才能がないのにあるように見せかけるもの)と実(実際に才能が充実しているもの)がある。しっかりと判別すべきである。
【一日一斎物語的解釈】
人の上に立つ者は、登用しようとする人物が本物なのか偽者なのかを見極める目を持たねばならない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、相原会長の部屋で談笑しているようです。
「この前も大累や新美と話をしていて、人を見抜くのは難しいなという話になったんです。会長は、人を見る基準をどこにおいているんですか?」
「まず大前提として、他人を知ることは不可能だと思っているよ」
「そこはもう割り切ってしまうわけですか?」
「うん。お付き合いしなければいけない人なら、短所には目を瞑って、長所を見るように心掛けてきたね」
「なるほど、美点凝視ですね!」
「美点凝視、良い言葉を知ってるんだね」
「いろいろ勉強しまして、私はどちらかというと相手の短所に先に目が向く人間なので、最近の私のテーマです」
「いいね!」
「他にも他人を見抜く基準はありますか?」
「僕はね、本当に立派な人というのは、等身大で生きていると思っているんだ」
「等身大?」
「うん。決して背伸びをせず、あるがままの自分をさらけ出している人。そういう人が本物の人物だと思うんだよね」
「わかる気がします。私はいつも自分を実力以上に見せようと背伸びをしている気がします」
「背伸びしている人を後ろから押すと、簡単によろけてしまうよね? でも、地に足のついている人は、簡単にはグラつかないでしょ?」
「はい」
「それに見せかけは脆い。ちょっと、異常事態が起こると、すぐにメッキがはがれてしまうよね」
「いやー、なんだか自分のことを言われているようで、恥ずかしくなってきました」
「神坂君だけじゃなく、私も含めて、そういう人が多いんだよ。だからこそ、等身大で、できることはできる、できないことはできない、とキッパリと言える人は凄いなと思うんだ」
「でも、そこをどうやって見抜けば良いんでしょうか?」
「たとえば、自分の短所を正直に言えるかどうかは基準になるんじゃないかな?」
「あぁ、そうですね。あとは失敗談を堂々と語れる人もそうでしょうね?」
「ふつうは自慢話をしたくなるもんね」
「はい。会長、ありがとうございます。すごく勉強になりました。大累や新美にもこの話をシェアします!」
「お恥ずかしい。結局、自慢話みたいになってないかな?」
「いえ、すばらしいお話でした!!」
ひとりごと