今日のことば

【原文】
財を運(めぐ)らすに道有り。人を欺かざるに在り。人を欺かざるは、自ら欺かざるに在り。〔『言志後録』第222章〕

【意訳】
財を運用するには大切な方法がある。人を欺かないということである。人を欺かないということは、まず自分自身に嘘をつかないということである

【一日一斎物語的解釈】
ビジネスの基本は、他人に対して嘘をつかないことである。そのためには、まず自分との約束を守ることが肝要である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、夏休み中の次男・楽君と談笑しているようです。

「父さん、お金持ちになるにはどうしたらいいの?」

「いまは、勉強と部活の両方を一所懸命にやることだろうな」

「それだけでお金持ちになれるの?」

「それが一番。それに加えて大事なことはまだあるぞ」

「教えて!」

「嘘をつかないことだ」

「そんなことでお金持ちになれるの?」

「嘘をつかないというのは、他人に対してだけじゃないぞ。自分に対しても嘘をつかないようにするんだ」

「自分に?」

「たとえば、明日は朝早く起きてランニングをしようと決めたとする。でも、朝になったら、どうせ夏休みだし、もっと寝ていたいと思って、ランニングを明日に延期する。これは、自分に嘘をついたことになるんだ」

「うわぁ、それはマズいなぁ!」

「どうした?」

「今朝、そのつもりだったけど、誰とも約束したわけじゃないからいいやと思ってやめちゃった!」

「それはマズいぞ!」

「えー、今から走ってこようかな?」

「ははは。今はやめておけ。こんな真夏の真昼間にランニングしたら死んじゃうぞ」

「そうか。ねぇ、なんで嘘をつくとお金持ちになれないの?」

「お前は、嘘をつく奴を信用できるか?」

「無理!」

「お金というのは、信用が一番なんだ。信用の無い人には誰もお金を払いたいと思わないだろ?」

「そうだね。とうさん、俺明日はちゃんと走るよ。それで大丈夫かな?」

「まだ、夏休みは始まったばかりだ。きっとお金の神様も許してくれるんじゃないかな?」


ひとりごと

金銭の授受は信用取引です。

信用がないところに人はお金を払いません。

儒学でいう「信」という徳目は、人に嘘をつかないことを意味します。

それと共に、「忠」、自分に嘘をつかないことも重要です。

まず、自分を含めた誰に対しても、素直で正直な人のまわりには、自然と人が集まってくるものです。


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