今日のことば

【原文】
今の君の為に利を興さんと欲する者は、焦心苦思せざるに非ず。然れども自利の一念挿(はさ)みて其の間に在ること有らば、則ち君の利は竟(つい)に興すこと能わず。〔『言志後録』第223章〕

【意訳】
現在の君主のために利益をもたらそうとする人は、みな大変苦労をして気をもんでいるものである。ところが、そこに自分の利益のためという気持ちが入り込めば、結局は君主に利をもたらすことは不可能であろう

【一日一斎物語的解釈】
自分が勤める企業、もしくは自分が経営する企業に利益をもたらしたいのであれば、利己心を捨てて、お客様のお役に立つことだけを考えるべきである。


今日のストーリー

「毎度、Nakaiロジスティックスです!」

「あ、中井さん!」

「神坂さん、お世話になります! しかし、暑いですねぇ」

「運送業の方は、夏場は大変でしょうね?」

「毎日、着替えを2〜3枚持ち歩いてますよ」

「水分補給を忘れないでくださいね」

「ありがとうございます!」

「ところで、お仕事は順調ですか?」

「おかげさまで、お盆はまったく休みなしですよ」

「それは大変ですねぇ」

「いえ、こうして仕事がもらえるのは、本当にありがたいことです。ウチの若い連中を食わせていかなきゃなりませんからね」

「社員さんは何人いるんですか?」

「正社員は3人です。それにプラスして、この時期はバイトの学生を3〜5名雇っています」

「すごいなぁ、中井さん。社長さんだもんねぇ」

「そんな実感はまったくないですよ。でもね、昨日うれしいことがありましてね」

「ぜひ聞かせてください」

「ウチの若い奴らが、『社長は家族サービスのために、お盆は休んでくれ』って言ってくれたんです」

「なんてやさしい部下なんでしょう!」

「もちろん、休みませんよ。むしろ、お前らが休めって言ったくらいです。結局、どちらも譲らず、お互いに出勤することになったんですけどね(笑)」

「素敵な会社をつくりましたね。社長も社員さんも自分のことを後回しにして、相手のためを思うなんて、話を聞いているだけで泣けてきますよ」

「ははは。なんで神坂さんが泣いてるのよ!」

Nakaiロジスティックスは安泰ですね。そんなふうにお互いを思う気持ちは、きっとお客様にも伝わります。口コミでお客様が増えますよ」

「そうだと良いんですけどね。本当は家も建てたいし、新しいバイクも欲しいんですけど、しばらくはその気持ちは封印します。会社を軌道に乗せるまでは、自分の利益のことは忘れないとね!」

「中井さん、カッコよすぎますよ!」

「この夏、利益が出たら、社員とバイトの皆を沖縄に連れて行ってやろうと思っています」

「社員旅行ですか?」

「はい。コロナが心配ですけどね」

「中井さんは、いつの間にか、とてつもない人格者になってしまいましたね。なんだか、置いていかれた気分です」

「何を言ってるんですか! 今の俺があるのは、神坂さんと佐藤さんのおかげです!」

「もう、それ以上は言わないで!! 自分があまりにも小さく感じて落ち込みそう……」


ひとりごと

組織をまとめ、共通の目的を達するためには、各自が己の利は後に回し、顧客の利を優先することが求められます。

しかし、顧客満足を達成するためには、その前に従業員満足度を高め、エンゲージメントを高めねばなりません。

そのためには、トップ自らが利己心を捨て、社員さんの利益を優先する必要があります。

そうなれば、意気に感じた社員さんは、お客様の利益のために力を尽してくれるでしょう。


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