今日のことば

【原文】
禹は吾れ間然するところ無し。飲食・衣服・宮室、其の軽重する所を知る。必ず是の如くにして、財も亦乏しからず。〔『言志後録』第225章〕

【意訳】
「禹王の業績については非難の口をはさむ余地が無い」と『論語』にもあるように、禹王は飲食・衣服・宮廷を質素にし、物事の軽重をよく理解していた。このようにしていれば、財貨が不足することはない

【一日一斎物語的解釈】
企業のトップは、自分の身の回りの備品や持ち物をあまり華美にすべきではない。どこを質素にし、どこに投資するかをよく弁えるべきである。ここを誤らなければ、企業が傾くことはない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、元同僚の西郷さんと一献やっているようです。

「古来、名経営者や名宰相と言われる人は、質素倹約を心掛けている人が多いんですね?」

「中国で言えば、舜から帝位を継いだ禹王はその代表だろうな」

「そうなんですね?」

「とにかく自分自身の衣食住に関しては、質素倹約を生涯守った人らしい。まぁ、神話の世界ではあるけどね」

「孔子が褒めているんでしたよね?」

「『禹は間然することなし』、つまり、禹王については何も言うことがない、と最大の賛辞を贈っているね」

「日本でいえば、やはり西郷隆盛公が頭に浮かびますね」

「あの人は大臣になってからも、家を建て直すことなく、雨漏りのする家に住んでいたらしいね」

「私ならそこまで徹底することはできないだろうなぁ」

「私が頭に浮かぶのは、上杉鷹山公かな。貧しかった米沢藩をV字回復させるために、トップ自らが絹をやめて、木綿の服を着たんだからね」

「そういう人たちは、自分を滅することができるんですね? 見習いたいところですけど、ちょっと私には無理かもなぁ」

「そこまでいかなくても、華美過大にならないように気をつければいいんだよ。一方で投資すべきことには、惜しんではいけない。西郷さんは、私財をなげうって学校を建てているよね」

「そうですね。何を倹約し、何に投資するかをしっかりと見極めないといけませんね」

「その判断さえしっかりしていれば、経営で大きく舵取りを誤ることはない。歴史がそれを証明しているよね」

「やはり歴史から学ぶことはたくさんあるんですね。『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』でしたね?」

「うん。御社の社長は、そこは弁えているんじゃないかな?」

「車はレクサスのエグゼクティブセダンです。本当は、もっと小さな車に乗りたいらしいんですけど、社長としての世間体を考えてのことだそうです」

「立派だね」

「私の場合、そんな車に乗ることすら夢物語ですけどね……」

「すねない、すねない!」


ひとりごと

高い地位を得たら、高級住宅地に済み、高級車を乗り回し、腕には高級腕時計、というのを夢見るのは仕方のないことです。

もちろん、それが悪いことだとは言っていません。

しかし、会社の経営状況や社員さんの生活にも目を配り、華美過大にならぬよう、最低限の努力をすべきです。

人の上に立つことは、忍耐との戦いでもあるのです。


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