今日のことば

【原文】
財を理(おさ)むるには、当に何の想を著(つ)くべきか。余謂(おも)えらく、「財は才なり。当に才人を駆使するが如く然るべし」と。事を弁ずるは才に在り。禍を取るも亦才に在り。慎まざる可けんや。〔『言志後録』第227章)

【意訳】
財産を運用するには、どういう考え方に立つべきであろうか。私は思う、「財は才能である。だから才能のある人を使うように取り扱うべきである」と。事を処理するのも才能であり、禍を呼ぶのも才能である。慎まないわけにはいかない

【一日一斎物語的解釈】
資産の運用の基本的な考え方は、才能のある人を上手に活かすのと同じように、資産を働かせることである。才能のある人も活用次第では、大きな戦力にもなり得るし、逆に会社に損害を与える場合もある。資産の運用もこれと同じで、活用の仕方にかかっている。くれぐれも慎重に取り扱うべきだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、読書会で知り合った藤村さんと食事をしているようです。

「藤村さんは、大手商社の経理マンでしたよね?」

「はい、経理一筋二十五年です」

「私とは縁遠い世界ですね。いつも経費申請で怒られているので、経理の人のイメージは良くないんですよ(笑)」

「私も営業マンから見れば、煙たい存在だと思われているでしょうね(笑)」

「やっぱり(笑) でも、経費を絞るばかりが経理ではないですよね?」

「もちろんです! そこは強く否定したいですね」

「藤村さんは、どういうポリシーで経理の仕事をされているのですか?」

「神坂さんは営業のマネージャーでしたね?」

「はい、そうです」

「では、神坂さんはどうしたら部下の社員さんが良い仕事ができるか、いつも頭を悩ませているはずですよね?」

「そのとおりです。若いメンバーが多いので、どう育てて一人前にしていくかを常に考えています」

「経理も同じです」

「え、どういうことですか?」

「お金を扱うことは、才能のある人を扱うのと同じだと思うんです」

「はぁ……」

「わかりにくいですよね。例えば、才能のある部下がいたとします。才能があるからこそ、気持ちよく働いてもらえれば大きな成果が出ますよね? しかし、扱い方を間違えば会社に損害を与えることさえあり得ます」

「それはそうですね」

「お金も同じです。お金は活用してこそナンボです。上手にお金に働かせることができれば、利益を生みますが、間違った働かせ方をすれば、損失を被ります」

「人間とお金は同じだとういうことですか?」

「はい。そういう意識で、日々お金と格闘しています。決して、営業マンの出費を極力減らしてやろう、などとは思っていませんよ(笑)」

「そうなんですね。ちょっと経理マンを見る眼が変わりそうだな」

「それは嬉しい! 御社の経理マンもきっと同じ想いで、日々頑張っているんじゃないですかね?」


ひとりごと

財産の運用は、才能のある人を扱うのと同じだ、という一斎先生の言葉は面白いですね。

人を活かすも殺すも、マネージャー次第なら、会社の資金を活かすか殺すかは、経理の人に懸かっているのかも知れません。

入るを量りて出ずるを制す、という言葉があります。

収入を超えない範囲で、しっかりとお金を使い、資産を回転させることが、本来のお金の使い方なのでしょう。


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