今日のことば

【原文】
余が左右に聘用(へいよう)の几硯(きけん)諸具、率(おおむ)ね皆五十年前得る所たり。物旧ければ、則ち屏棄(へいき)するに忍びず。因て念(おも)う、「晏子の一狐裘(こきゅう)三十年なるも、亦恐らくは必ずしも倹嗇(けんしょく)に在らざらん」と。〔『言志後録』第238章〕

【意訳】
私が自分の左右において愛用している机や硯その他の道具は、だいたい五十年前に入手したものである。物は古くなると愛着が沸いて棄てることが忍びなくなるものである。そこで思うのだが、「晏平仲が一枚の狐の毛皮を三十年身につけていたというのも、恐らくはそうした理由であって、単にけちだということではないだろう」と

【一日一斎物語的解釈】
モノを長く愛用することは、吝嗇(けち)とは違う。今の時代こそ、なんでも新しくするのではなく、末永く愛用するモノを持ちたいものだ。


今日のストーリー


今日の神坂課長は、読書会に参加した後、一緒に参加した松本さんとお食事中のようです。

「フミさん、ちょっと気になったんですけど、フミさんの万年筆ってかなり使い古されているように見えたんですけど……」

「あー、あれね。あれはかれこれ三十年以上使っているんじゃないかな」

「三十年ですか?!」

「あの万年筆はね、私が課長になったときに、先代の社長からもらったものなんだ」

「ということは、フミさんが使う前に、先代も長く使ってきたということですよね?」

「うん、たぶん先代も三十年近くは使って来たんじゃないかなぁ」

「えー、ということは合計六十年!!」

「実はね、一度ペン先を交換してはいるんだ。でも、ボディは昔のままだよ」

「万年筆って、そんなに長く使えるんですか、驚いたな」

「私は、大事な書類にサインするときは、必ずあのペンでサインをしてきた。もしかしたら一番の宝物かもしれないなぁ」

「あ、以前にフミさんからいただいたビジネスマンの心得も手書きでしたね。あれも、その万年筆ですか?」

「もちろん!」

「すごいなぁ。ひとつのモノを長く愛用するのって良いですよね」

「ゴッドの愛用品はないの?」

「私は手帳とかペンは新しいモノが出ると、すぐに試してみたくなる質でして、ひとつを長く使うことができないんです」

「そうなの? それは残念」

「あっ、ひとつあります! 野球のグラブです。高校に入学して野球部に入ったときに、親に買ってもらったグラブを高校・大学とずっと使い続けてきました」

「すばらしい!」

「最近は、あまり時間がなくて野球をやっていないんですけど、グラブの手入れは習慣になっているので、毎週欠かさずやっています」

「古いモノを使い続けることは、今の時代にこそ、必要なことだよね」

「たしかにそうですね。私も万年筆を買ってみようかなぁ」

「そうだ、あの万年筆をゴッドに譲ろうか?」

「いやいや、ダメです。そんな大切なモノをもらうわけにはいきません。フミさんが使い続けてください!」

「よし、わかった。では、私が文字を書かなくなるときが来たら、そのときはゴッドに譲らせてくださいな」

「恐縮至極です!!」


ひとりごと

皆様にも愛用品はあるでしょうか?

小生も神坂課長と同じで、次から次へと新しいモノを買ってしまうタイプなので、何十年と使い続けたという品は多くありません。

唯一、初めての赴任地であった広島を去るときに買ったパイロットの万年筆だけは、使用頻度こそ少ないのですが、かれこれ二十年くらいは筆入れに入っています。

久しぶりにインクを入れて使ってみようかな?

仮に世間からケチだと言われようと、愛する一品を使い続けることは粋なことですよね。


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