今日のことば
【原文】
道理は弁明せざる可からず。而も或いは声色を動かせば、則ち器の小なるを見る。道理は黙識せざる可からず。而も徒らに光景を弄すれば、則ち狂禅に入る。〔『言志後録』第247章〕
【意訳】
物事の道理については、分別をもって明確にしておかねばならない。ところが声を荒げたり、顔色を変えたりすれば、それはそのままその人の器の小ささを露呈することとなる。また、物事の道理とは、心中に悟るものであらねばならない。ところがやたらと心の中であれこれと考えすぎるようなことでは、野狐禅(真に悟りもしないで、悟った風をすること)になってしまう。
【一日一斎物語的解釈】
マネジメントの軸となる考え方は、メンバーに周知徹底しておくべきであるが、大声を出したり、顔色を変えたりして強要すれば、それは自らの首を絞めることになる。なにをすべきかを考える時は、一人静かに判断をすべきであり、あまり考えすぎれば、かえって結果は悪い方向へ向いてしまう。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋に居るようです。
「さっき梅田君を叱っていたときの叱り方はどうだろうね?」
「あぁ、聞かれていましたか? ついつい厳しい言い方をしてしまうんですよね」
「内容は厳しくても、それが正しいことならば伝えるべきだよ。ただ、大声を出すのはどうかなと思うんだ」
「はい、そこは反省すべき点だと認識しています」
「梅田君がお客様にとった態度は大問題だよね。ふてくされて、最後は扉を大きな音を立てて閉めたんでしょ?」
「そうなんですよ。ちょっと考えられないですよ」
「うん。その点はしっかりとアドバイスをしてもらいたいけどね」
「声を荒げたり、怒りが表情に出てしまうと、伝わるものも伝わらないですね」
「それだけでなく、神坂君の器の小ささを露呈することにもなりかねないよ」
「まだまだ鍛錬が足りないということですね」
「うん、そうやって矢印を自分に向けて欲しい」
「はい。何か事が起きたら、矢印を自分に向けることが私のテーマですから、しっかりと反省し、どうすべきだったかをじっくり考えてみます」
「うん。ただし、あまり考えすぎも良くないけどね。心を静かにして悟るところがあればそれで良しだ。まぁ、その点は神坂君に関しては心配ないかな(笑)」
「単細胞ですから、あまりあれこれ考えるのは苦手です(笑)」
「そうだったね。いずれにしても、伝えるべきことは伝えなければいけない。だからこそ、伝え方が大事なんだよ」
「はい。考えてみれば、若い頃の私は梅田より酷かったかも知れません。そんな私を変えたのは、部長の言葉であり、話し方だったのだと理解しています」
「思い出すのも辛い日々だった(笑) でも、私は神坂君のおかげで成長できたと思っている。神坂君には感謝しているよ」
「部長には心から感謝しています。私の上司であり恩人です。そして私もこういう機会を与えてくれた梅田に感謝しないといけないんですね? あー、やっぱり私はまだまだです!」
「それに気づけば、変わることができる。日々成長していこう!」
ひとりごと