今日のことば

【原文】
人は皆仰いで蒼蒼たる者天たり、俯して隤然(たいぜん)たる者地たるを知れども、而も吾が軀(み)の皮毛骨骸(ひもうこつがい)の地たり、吾が心の霊明知覚の天たるを知らず。〔『言志晩録』第7章〕

【意訳】
人はみな空を仰いでは青々とした天があることを知り、地を見てはやすらかに続く大地のあることを知るが、自分の体や皮膚、毛髪、骨などが地から得たものであり、自分の心の霊明さや知覚する能力は天から受けたものだということを知らない

【一日一斎物語的解釈】
人間も大自然の摂理の中で生かされている。つまり、一人ひとりの身体の中に小宇宙が存在しているものなのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長と同行しているようです。

「人間の魂って不思議ですよね。生きている間は感情を抱くのに、死んでしまえば機能しなくなる。魂は一体、人間の身体のどこにあるんでしょうか?」

「いきなり哲学的な質問だね。魂と呼ばれるものが、脳にあるのか、心臓にあるのかってことかな?」

「はい。どんな人にも感情がありますから、身体のどこかにあると思うですけどね」

「科学的に言うなら、脳にあるということになるんだろうけどねぇ」

「その割には、感情の話をするときには、『心』という言葉を使いますよね。まるで、心臓にあるかのようです」

「申し訳ないけど、その答えは持ち合わせていないな(笑)」

「そうですよね、すみません」

「その話とはちょっと違うけど、一斎先生をはじめとして儒学者たちは、魂は天から授かり、肉体は地から授かるという考え方をするんだよ」

「そうなんですね。そういえば、人は亡くなると埋葬されます。つまりそれは、生まれた場所に帰っていくイメージなのですかね?」

「そうかも知れないね」

「あー、ということは、魂は天に還っていくんですね」

「そうだね。一旦、天でメンテナンスを受けて、また別の肉体の中に入っていくという感覚かな」

「面白い考え方ですね。実際に魂が天に還っているかどうかはわかりませんけど(笑)」

「そういう考え方からすれば、人間は天と地の両方からパワーをもらう必要があるわけだ。昔から『神祇(じんぎ:天の神と地の神)に祈るというのは、そういう意味もあるんだろうね」

「なんとなく神様は天にいるというイメージがありましたが、地にも神はいるんですね」

「特に古代の中国では、そういう考え方をしていたようだよ」

「もっと地面と触れ合わないといけませんね。そうか、COVID-19のせいで外出できない人は、地のパワーが不足しているのかも知れません」

「うん。そろそろ大自然を味わいに旅に出たいね」

「行きましょうよ。西村さんも誘って!!」


ひとりごと

ここでの一斎先生の言葉は、現代の科学からすると、正しい見解ではないでしょう。

しかし、人間は天と地からパワーを受けているということは、事実ではないでしょうか?

オンラインやメタバースの発達で、仮想空間で事足りる時代となりつつあります。

しかし、メタバースの世界では、本物の陽の光を浴びることはできません。

やはり、時にはリアルな旅をして、天と地から存分にパワーを受けとる必要があるようです。


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