今日のことば
【原文】
人心の霊、知有らざる莫し。只だ此の一知、即ち是れ霊光なり。嵐霧(らんむ)の指南と謂う可し。〔『言志晩録』第12章〕
【意訳】
人の心の霊妙なはたらきは、何事も知らないものはない。この知性こそが、霊妙な光であって、人間の欲心を正しく導くものといえる。
【一日一斎物語的解釈】
本来、人の心は善良であって、自らの欲を抑制できるはずである。
今日のストーリー
今朝の神坂課長は、新聞記事を読んでいるようです。
「どうしてこんな罪を犯すんだろうなぁ。子供じゃないんだから、自分の欲望をもう少し抑えられないものかね?」
「アンウイッシュの渡辺の話ですか?」
「石崎、古いな。今頃俺がそんな話を持ち出すと思うか?」
「そうですけど、いまのコメントを聞くと、あの事件しか思い出せないです」
「ははは、たしかにな。まぁ、似たような事件かもな。ウチの近所で女性のパンティが立て続けに盗まれる事件があってな。その犯人がようやく捕まったんだよ」
「あー、昨日ニュースでやっていました。課長の家の近所だったんですか?」
「そうなんだよ。幸い、ウチは被害を受けてないけどな」
「私は、性欲が一番抑えがききますけどね。それより物欲の方が大きいです」
「よく言うよ。彼女がいないと生きていけないとか言ってなかったか?」
「そ、それは性欲ではなく、愛情ですよ。人を愛し、愛されているときが一番幸せじゃないですか!」
「うそくせぇな。まぁ、とにかく、この程度の欲望が抑えられない奴が増えているのは、日々の学びを怠っている証拠だな」
「学びですか?」
「そう、本来人間の心は、その程度の善悪を判断できないほどポンコツじゃないはずだ。だけど、日々の生活の中で心は曇る。その曇りを晴らすには、学びが必要なんだよ」
「たしかに、以前に比べると、課長もキレなくなりましたよね」
「そ、そうだろう。学んでいる証拠だよ」
「それにしても良かったですね。あまり長い間、犯人が捕まらないと、課長が疑われそうですもんね」
「なんで俺が疑われるんだよ!」
「奥さんのは盗まれていないというし……」
「このクソガキ、鼻の穴に割り箸を突っ込むぞ!」
「そう思っても、課長の場合は、学びを続けているから実際にはその気持ちを抑えられるんですよね?」
「いや、それがさ。ほら」
「げっ、割り箸だ! そんなことしたら、明日の新聞に載りますよ!!」
ひとりごと
生まれたときのピュアな心を持ち続けていれば、善悪は判断できるのだそうです。
ところが、生きていくうちに、少しずつ人間がズルくなってくるにつれて、心も淀み、曇ってきます。
その淀みや曇りを晴らすためには、学問をするしかありません。
学ぶことで、ピュアな心を取り戻せば、人生大過なく過ごせるはずです!