今日のことば

【原文】
一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め。〔『言志晩録』第13章〕

【意訳】
暗い夜道をたっとひとつの提灯を下げて歩く。暗い夜を心配することはない。ただ手にする一燈を頼りに進めばよいのだ

【一日一斎物語的解釈】
遠い将来を心配する必要はない。ただ今やるべき事に全力を尽くせばよい。


今日のストーリー

今朝の神坂課長は、営業2課の山田さんと同行しているようです。

「この前、テレビ番組で言っていたのですが、西暦2100年には日本の人口は今の半分になるらしいですね」

「そうみたいだね。それって明治維新の頃の日本の人口なのかな?」

「大正時代の人口と同じくらいだそうです」

「なるほど、ということはそこからまた日本を洗濯すればいいじゃない!」

「残念ながら、その頃とは人口の構成比が違うらしいんです」

「あぁ、そうか。その頃は若い人がたくさんいたんだね。しかし西暦2100年は老齢人口が多くなっているわけか」

「そうです。だから、同じような復興は期待できません」

「山田さん、たしかに日本の行く末は心配ではあるけど、どうせ俺たちはその頃には死んでいるわけだし、悩んでも仕方がないよ」

「そうですねぇ」

「そんな先のことを心配するより、今目の前にあることに力を尽くすしかないよ」

「はい。そういえば、課長のところは男の子二人でしたよね?」

「うん。あ、山田さんは女の子二人だったね。ということは、俺たちは少なくとも最低限の人類貢献はできたのかもよ」

「そう考えましょうか?」

「うん、そしてガキ共にも結婚をして子供をつくるように教育していこうよ」

「そのためには、夫婦が仲よくして、子供たちに『結婚っていいな』と思ってもらわないといけませんね」

「ゲッ、それはできてないかも……」

「ウチは結構、仲が良いですよ。この前も、夫婦で旅行に行ってきました」

「それ以上言わないで! それにしても酷いなぁ、山田さん。せっかくポジティブになるような話をしたのに、それで俺を貶めるなんてさ」

「貶めているつもりはありませんよ。すみませんでした!!」

「ははは。わかってるよ。まぁ、とにかく、はるか彼方を見渡せるような強いライトよりも、この両足を踏み出す先の地面を照らす灯りがあれば歩いていくことはできるんだから、それでよしだよ!」

「はい。まずはこの両足を一歩前に進めていきます!!」


ひとりごと

一燈照隅・万燈照国、とは伝教大師最澄の言葉です。

安岡正篤先生は、後半を入れ替えて、萬燈遍照という言葉を使っています。

一人ひとりが、自分の身の回りを照らす。

たとえその一人の灯りはちっぽけでも、それが萬と集まれば、遍く全体を照らすことになる、という意味です。

まずは、自分の足元をしっかりと照らすことを意識しましょう。

それはすなわち一歩を踏み出すこと、つまり目の前の仕事に全力を尽くせということなのです。

その姿が周囲の人に化学変化を与え、皆が自分の周囲を照らす日がくると信じて!!


chouchin