今日のことば

【原文】
「天下の物、理有らざる莫し」。この理即ち人心の霊なり。学者は当に先ず我れに在るの万物を窮むべし。孟子曰く、「万物皆我れに備わる。身に反りみて誠なれば、楽焉(これ)より大なるは莫し」と。即ち是(これ)なり。〔『言志晩録』第14章〕

【意訳】
『大学章句』五章の朱子補伝に「天下の事物は皆一つとして道理を備えていないものはない」とある。ここでいう理とは人の心の聖なる働きのことである。学問をする者はまず自分の中に備わっている万物の理を窮めるべきである。孟子は、「万物の道理は総て自分の中に備わっている。それだから、自分自身に反省してみて、自分の本性に具わっている道理が、皆誠実であるならば、これほど大きい楽しみはない」と言っている。まさにこのことを言っているのだ

【一日一斎物語的解釈】
自分の心には万物と同じく宇宙の摂理が備わっている。心を磨き、心の誠に忠実であれば、万物と一体となる楽しみを享受できる。


今日のストーリー

今朝の神坂課長は、元同僚の西郷さんと食事をしているようです。

「サイさん、真の楽しみってどういうものなんでしょうね?」

「楽しみは人それぞれだとは思うよ。ただ、言えることは、地位や名誉や財産を得ることではないだろうということだね」

「やはりそうですよね。若い頃は、金持ちになることが幸せなことであり、お金がたくさんあって自由に使えればなんでもできて最高に楽しいだろうと思っていました」

「今は変わった?」

「はい。サイさんや佐藤部長にいろいろとご指導をいただいて、少しずつ分かってきた気がします。まぁ、現実が見えてきたということもありますけどね(笑)」

「うん。実はそこが重要だと思うよ。自分の分を知り、現実を直視し、自分自身が自分が思っていたような人間ではないと気付かされる。そこでいったんは落ち込むだろうけど、そこからどう立ち直り、その後の人生をどう生きるか、そこが大事なんだよ」

「そんなことが少しだけわかってきた気がします。ところで、サイさんの今の楽しみはなんですか?」

「私が最高の楽しさだと思うのは、晩年の孔子の生き方だろうなぁ。『心の欲する所に従えども矩を踰えず。自分の心の赴くままに行動をしても、それがすべて道から外れないという境地。そうなれたら最高の楽しみを得ることができるんじゃないかな」

「今はまだその域には達していないですか?」

「まだまだだよ。もっともっと学びを深めていかないとね」

「どんな学びが必要なんですか?」

「物事にはすべて宇宙の摂理が備わっている。その摂理を究めたいということかな」

「その摂理を究めるとどうなるんですか?」

「誠の生き方ができる。いわゆる『至誠惻怛』の域だね」

「しせいそくだつ?」

「まごころと悼む心、それを備えた生き方ができる。つまり至誠惻怛は、宇宙の摂理に適うものだと思っているんだよ」

「それならすでにサイさんは身につけている気がしますけどね」

「いやいや、至誠とは最高の誠だよ。一生かかっても身につけられるかどうかわからないよ」

「それが身につけば、孔子のように生きられるんですね?」

「うん。孔子は七十代でその域に達した。私はとても難しそうだから、生きながらえて八十代になった時には、そうなっていたいと思っているよ」

「サイさんが聖人孔子のようになった姿をこの目で拝ませて頂きます!」

「おっと、これはプレッシャーをかけられてしまったね(笑)」


ひとりごと

人は、宇宙の摂理をその心に宿しているのだ、と儒家は考えます。

その理と一体となって生きるとき、最高の楽しみを享受できるのでしょう。

しかし、その道は険しいと言わざるを得ません。

なにせ、孔子が七十代でようやくたどり着けたのですから。

小生もあきらめず、プラス10歳でその境地を手に入れる所存です。


oldman_78