今日のことば

【原文】
倫理・物理は同一理なり。我が学は倫理の学なり。宜しく近く諸を身に取るべし。即ち是れ物理なり。〔『言志晩録』第15章〕

【意訳】
人の踏み行うべき倫理と物の道理との間には共通の理が存在する。私の学問つまり儒学は人倫の学問である。これを我が身に引き入れて実践すべきである。そしてそれが物の道理でもあるのだ

【一日一斎物語的解釈】
人倫の道は宇宙の摂理と通じている。したがって人倫の道を踏み行えば、自然と物事の道理にも通じ、豊かな人生を送ることができる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、N鉄道病院名誉院長の長谷川先生を訪れているようです。

「長谷川先生、難しそうな本をお読みになっていますね」

「あぁ、これ? これは、『人倫の道』という本でね。偉大な哲学者・西普一郎先生の語録集なんだよ」

「どんな方なのですか?」

「うん。森信三先生が自分が接した人の中で最高にして最深の人格者だと評した人なんだ」

「難しいことが書いてあるんですか?」

「西先生の本は難しいけれど、これは語録集だから、それほど難解ではないよ」

「そうですか。人倫って、人が踏み行うべき道というような意味でしたよね?」

「よく勉強しているね。そのとおり。そして、その人倫の道を踏み行うためには、人間とは何か、自分は何のために生まれてきたのかを明確にしなければいけないんだ」

「そんなこと考えたこともないです」

「ははは、神坂君もそろそろそういうことを考えても良い年齢かもね?」

「私の場合、学び始めたのが遅いので、もう少し先かもしれません」

「なるほど(笑)」

「人が踏み行うべき正しい道とは、もう少し具体的に言うとどういうことなんでしょうか?」

「私は『感恩報謝の心をもつことだと思っているよ」

「感恩報謝ですか?」

「この言葉は、『感謝』という言葉の元になった言葉でね。『感恩』というのは、受けた恩を有難く思うこと。そして『報謝』というのは、恩に報いることをいうんだよ」

「それが人倫の道の基本なのですか?」

「西先生は、道徳教育こそ教育全部の中心だと言っている。道徳教育の真髄は、感恩報謝の心を育てることにあるんじゃないだろうか」

「今はその感恩報謝の心を失くした時代なのですね?」

「うん。感恩報謝の心があれば正しい道を歩いてゆける。そして、人倫の道を歩めば、自然と事物に通じる。なぜなら、人も物も共通する宇宙の摂理を宿しているからね」

「物を大切にするようになる、ということですか?」

「簡単に言えば、そういうことかもね。物の道理がわかれば、原子力などに頼らずとも人間は暮らしていけるはずなんだよ」

「ありがとうございました。まずは、感恩報謝の心ですね。自分に関わるすべての人に感謝して、それを言葉や行動に表すところから始めてみます!」


ひとりごと

「感恩報謝」という言葉が、「感謝」の語源だということは御存知でしたか?

感謝とはすなわち、恩に報いることを意味するのです。

両親の恩、祖父母の恩、上司の恩、師匠の恩をしっかりと受け止めて報いる。

この場合の報い方は、ご恩返しだけでなく、ご恩送りであっても良いでしょう。

いずれにしても、この感恩報謝こそが、人間の行動の中でもっとも貴いものなのかも知れません。


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