今日のことば

【原文】
濁水も亦水なり。一たび澄めば則ち清水と為る。客気も亦気なり。一たび転ずれば、正気と為る。逐客(ちくかく)の工夫は、只だ是れ克己のみ。只だ是れ復礼のみ。〔『言志晩録』第17条〕

【意訳】
濁った水も水には変わりない。いったん澄めば清らかな水となる。物にはやる気持ちも気であることには変わりない。いったん転換すれば正しい気となる。客気を追い払う工夫とは、ただ己の私欲に打ち克つことである。また正しい礼に帰ることである

【一日一斎物語的解釈】
人間は生まれながらに善の心をもっている。その善の心を発揮するには、己の欲に勝ち、正しい礼儀作法を実践すればよい。


今日のストーリー

今朝の神坂課長は、フミさんこと松本元社長と食事をしているようです。

「フミさんは、社長だったとき、自分の社員さんの長所が見えていましたか?」

「前にも言ったけど、リーマンショックで倒産の危機に陥るまでは、長所より短所が目について、いつも叱ってばかりいた気がするよ」

「あー、そう言っていましたね」

「社外取締役をすべて解任して、頼みは社員さんだけになったから、みんなを信じるしかなくなったんだよね」

「社員さんの中には私みたいなデキの悪い社員さんもいたんじゃないですか?」

「ゴッドがデキの悪い社員さんだと思ったことはないよ。でも、当時の社員さんの中には、売上計画を一度も達成できていない営業マンもいたんだよね」

「それでも美点凝視ができたんですか?」

「その時に気づいたんだよ。どんなに濁った水であろうと、蒸留すればきれいな水になる。それと同じで、たとえやる気が空回りしていようと、やろうという気持ちがあるなら、それを上手に導いて正しい気に変えることができるはずだ、とね」

「なるほど」

「その前に、まずは私の接し方を変えようと思ったんだ。社員さんが持っている力を発揮できていないのは、結局はトップである私に問題があるのだと気づいたからね」

「矢印が自分に向いたんですね?」

「うん。トップの私が己に打ち克つことができれば、社員さんも団結してもらえるんじゃないかと思ってね。藁にもすがるような気持ちだったよ」

「その結果、皆さんが変わったんですね?」

「そうなんだよ。それまで残業なんてしたことがなかった事務員さんまで、遅くまで働いてくれるようになった。それも残業代のことなど、ひとことも言わずにね!」

「すごい! きっとフミさんの気持ちが姿勢にも表れていたんでしょうね」

「そうかも知れないね。それ以降は、みんなが気持ちよく挨拶できる会社になったからね」

「自分に打ち克つことと正しい礼の実践がキーワードのようですね?」

「おぉ、ゴッドは人の話をまとめるのがベリーグッドだね!」

「ありがとうございます!!」

「うん、気持ちの良い返事だ(笑)」


ひとりごと

自分のやることが首尾よくいくか否かは、すべて自分次第です。

己の欲に打ち克ち、矢印を自分に向け、正しい生き方を貫けば、越えられない壁はないのかも知れません。

それはすなわち至誠と呼ぶものなのでしょう。

孟子も、「至誠にして動かざる者は、未だ之れ有らざるなし」と言っています。

吉田松陰先生は孟子のこの箴言を愛し、その通りに一生を生き抜きました。


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