今日のことば

【原文】
程子は「万物は一体なり」と言う。試みに思え、天地間の飛潜・動植・有知・無知、皆陰陽の陶冶中より出で来るを。我も其の一なり。易を読み理を窮め、深く造(いた)りて之を自得せば、真に万物の一体たるを知らん。程子の前、絶えて此の発明無し。〔『言志晩録』第20条〕

【意訳】
程子(程顥・程頤兄弟)は「万物は一体なり」と言っている。実際考えてみると、天地の間にある鳥・魚・動物・植物や知を有するもの、無知のものなど、これらはすべて陰陽の生成から生まれたものであって、この私もまたそのひとつである。『易経』を読んで理を窮め、深く道に達してこのことを自得してみれば、実際に万物が一体であることが理解できる。程子の以前には、このようなことを明らかにした人はいない

【一日一斎物語的解釈】
『易経』を読むと、万物は陰陽の生成から生じており、万物は一体であることが理解できる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、元同僚・西郷さんと食事をしているようです。

「サイさんは、易にも精しいんですよね?」

「いや、『論語』を学ぶ上で必要な知識を仕入れているに過ぎないから、精しいとは言えないなぁ」

「そうですか。以前にサイさんに『易経』も読むといいと言われて買ってはみたものの、いまだ手付かずなんです」

「竹村先生の本を買ったの?」

「はい。竹村先生の本を数冊と本田濟先生の本を買いました」

「基礎を学ぶなら、それで十分だと思うよ。あとは、きっかけだね」

「実は、私の知人に易を教えている方がいたのですが、つい先日、病気で亡くなってしまったんです。まだ50歳を少し過ぎたくらいの方でしたので、ショックでした。いつか、その方に教えてもらおうと思っていたのですが……」

「それは残念だったね」

「実はそれもひとつのきっかけだと思って、勉強を始めてみようかと思っているんです」

「ぜひ、そうしてごらん。『窮すれば通ず』という考え方は、何にでも応用できるはずだよ」

「すべては陰と陽の組み合わせだというシンプルな考え方ですけど、好景気と不景気、健康と病気など、たしかに2つの極の間を行ったり来たりするものばかりですよね」

「だから昔の儒者は、万物が陰と陽の生成によると考えたんだ。天から理を、地から気を受けて万物が成り立っているという考え方をするんだよ」

「そういえば、天と地、月と太陽なども陰と陽の組み合わせのように見えますね」

「あの孔子が、易を学べば大きな過ちを犯すことなく一生を過ごせると言っているくらいだからね」

「以前に、学問の目的は立身出世にあるのではなく、禍福終始を知って惑わないためだ、と教えて頂きましたよね。易を学べば、小さなことには動じなくなるように思えます」

「間違いないよ! 易を学ぶとは、もしかすると宇宙の摂理を学ぶことなのかも知れないよ」

「あぁ、またまた出ました、宇宙の摂理! それを聞いたら、益々学びたいと思う気持ちが湧いてきました」

「神坂君も東洋の古典を学ぶようになってもうすぐ5年でしょ? そろそろ機は熟したかもね」

「はい。孔子も五十までに易を学べば、禍はないと言っていたんですよね? 私はまだ五十までには、すこし時間がありますので、いまのうちに易を学んでおくことにします!!」


ひとりごと

陰と陽で世界を表す易の考え方は、とてもシンプルですが、それゆえに奥深さを感じます。

朝と夜、夏と冬、喜びと悲しみ等々、多くの事象が二極の対立で表現されてきました。

もしかすると、陰と陽で表わせないものは、この世にはないのではないかと思ってしまいます。

大きな過ちを犯さずに一生を全うしたいなら、易を学ぶに如かずのようです。


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