今日のことば

【原文】
学に次第有るは、猶お弓を執り箭(や)を挾(さしはさ)み、引満して発するがごとし。直ちに本体を指すは、猶お懸くるに正鵠(せいこう)を以てして必中を期するがごとし。〔『言志晩録』第25条〕

【意訳】
学問を行なうには順序がある。それはあたかも弓を手に持ち、矢をはさみ、それを満月のように引き絞った後に矢を発するようなものである。すぐに本体すなわち修己治人を目指すということは、弓の的を懸けておいて必ず命中することを期待するようなものであって、期待すること自体が間違いである

【一日一斎物語的解釈】
なにごとも一足飛びに成就するものはない。仕事も学問も同じである。段階を踏んで着実に成長していくしかない。


今日のストーリー

営業2課の善久君が、同業他社M社の青木君とランチをしているようです。

「善久さんは、どうしていつもそんなに笑顔でいられるんですか?」

「えっ、そうかな? 営業成績ではいつも苦労しているから、結構しんどいけどね」

「全然、そんな風に見えないです。善久さんは私の憧れの営業マンです!」

「そんなこと言われたの始めてだな。でも、すごく嬉しいよ。青木君、ありがとうね」

「こうしてランチに誘ってもらえて、私もめっちゃ嬉しいです!」

「青木君こそいい笑顔をしているよ。それに懐に入るのが絶妙だし、君はきっと将来すごい営業人になるよ!!」

「そんなことはないです。私は営業に向いていないんじゃないかと悩んでいるんです」

「特にどんなことに悩んでいるの?」

「お客様の心の内を読むのが苦手で、言葉をそのまま信用して痛い目に遇ってばかりなんです」

「ははは」

「何がおかしいんですか?!」

「僕も以前は同じことで悩んでいたから、それを思い出してしまってね」

「どうやって心が読めるようになったんですか?」

「ねぇ、青木君。ちょっとお願いがあるんだけど、明日までにフランス語を話せるようになってきてもらえないかな?」

「えぇ、そんなの無理に決まっているじゃないですか! フランス語の単語なんて、『ボンジュール』しか知らないのに!!」

「そうだよね。でもさ、お客様の心の内を読むことだって同じじゃないかな?」

「あぁ、時間が必要だということですか?」

「時間だけじゃないよ。経験、とくにたくさんの失敗が大事だと思うよ。何事も踏むべきステップというものがあるからね。一足飛びに成長するなんて不可能なんだよ」

「失敗なら、たくさんしています(笑)」

「それを一つひとつ反省して、何が問題だったかを自分なりに考える習慣をつけるといいよ」

「そうすれば、私も心の内が読める営業マンになれますか?」

「なれるよ、絶対に!」

「がんばります! でも、そういうことに自分で気づけたなんて、やっぱり善久さんは凄い人だなぁ」

「いや、今のフランス語の話は僕の上司の受け売りなんだ」

「あ、そうなんですか? ちょっと安心しました」

「上司からそう教えてもらって、僕も少し気が楽になったんだ。それからは、失敗をしたら、落ち込むより反省することを心掛けた。そうしたらいつの間にか、お客様の心の中が少し見えるようになってきたんだ」

「そうですか。ありがとうございます! 私も営業マンとしてやっていけそうな気がしてきました。ここは……」

「ストップ! 『私に奢らせてください』でしょ?」

「なんでわかったんですか?! 本当に心が読めるんですね?」

「今のはわかるでしょ(笑) でも、ダメだよ。後輩から奢られたなんて僕の上司が知ったら、どれだけ叱られるかわかったもんじゃないからね」

「善久さんが私のせいで上司の方に叱られるなんて、そんなことはあってはいけません。では、奢ってください!!」

「やっぱり青木君は、凄い営業人になるよ(笑)」


ひとりごと

仕事であれ趣味であれ、何かを始めて、それが一人前になるまでには、多くのステップを踏む必要があります。

小さな成功体験を積み重ねていくことも重要ですが、忘れてはいけないのが失敗から学ぶことです。

むしろ、人間は成功からより失敗から多くを学ぶ生き物です。

時間と経験を積み重ねて、一つの道を究めていきましょう!!


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